15年連続「輸入車ブランド別販売台数No.1」フォルクスワーゲン、強さのヒミツ

フォルクスワーゲングループジャパン庄司茂社長に聞く
週刊現代 プロフィール
発売 『Polo』発表時。「奥さんを説得して買う車でなく、奥さんにも選んでもらえる車」

社長として

社員によく言うのは「ディールキラー(取引などの妨げ)にはならないから、早めに相談してほしい」ということ。例えば、晩ごはんのレシピが事細かに提示され、実は食べたくなかったりしたら困るじゃないですか。それより「今日はハンバーグにする?」と大まかに聞かせてくれれば「付け合わせはニンジンがいい」などと、押えるべき点が話せます。すると、すぐ「これはやめておけ」と言う「ディールキラー」にならずにすむのです。

真剣

私生活では、こだわりを持って生きていますが、人には理解してもらえないかもしれません。例えば、空港の金属探知機で「ブー」と止められ再検査されるのが嫌で嫌で、靴も時計も金属の量が少なく、私を「ブー」から守ってくれる製品を揃えています。

先の冬には息子がスキーをやりたがったので、十数年ぶりにゲレンデへ行きました。久々にやると、何ともおもしろい。息子にも「真剣にレーサーを目指すなら道具を買ってやる」と話し、毎週末、修行するかのように滑っていました。自分でも、この性格が面倒くさい(笑)。

バドム!

とはいえ、趣味を聞かれたら「仕事」と答えます。VWの車には、いい意味で
のこだわりがあるんです。例えば、制動距離が短くてピタッと止まるんですよ。また、フロントドアを閉じてもリア(後部)のドアを閉じても “バドム!”といい音がします。リアは開閉の回数が少ないからとお金をかけず“パコッ”と鉄板の軽い音がするようなことはありません。しかも、運転が上手な方が奥さんを説得して買うような車でなく、どなたでも運転がしやすいんですよ。

火元

自動車は「熱で売るもの」です。孫子の兵法に「善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず」という言葉があります。人を動かすなら、能力だけでなく「勢い」も大事、といった意味です。自動車も同様に、営業が「絶対にお薦めです!」という情熱をお客様に伝え、初めて売れるものなのです。

しかもそんな勢いや情熱は伝播するものです。だから私は、情熱の火元になろうとしていますし、周囲には常に「火元になれる人間ばかりじゃないだろうけど、可燃物ではあってほしい」と伝えています。弊社の店舗でも、お客様にそんな情熱と、こだわりが伝われば、と思っています。

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日本一社長を取材している記者の編集後記

庄司氏は、ご本人いわく「臆病者」だそうだ。思えば私が経営者の取材をしてきたここ20年ほどの間にも、「社長」のあり方は大きく変わり「臆病」タイプが増えたと感じる。90年代まではトップダウン型が多かった。だが00年代以降は明らかに、フラットな組織をつくり、社員の自主性を重んじる企業が多い。なぜか。

簡単に言えば、ネットの登場などによって仕事にスピードが要求されるようになり、書類を社長に回覧するまでに時間が空しく過ぎるような仕事の形は通用しなくなってしまったのだ。だから、社員が自主的に動いてくれる環境かどうか、社長が常に気をつかっている。だから社長は決裁者ではなく、情熱の火付け役なのだ。「社長像」も時代によって移り変わるものなのだろう。(取材日:6月15日)

(取材・文/夏目幸明)
『週刊現代』2015年8月8日号より


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