【二宮清純レポート】ノーコンピッチャーから打者転向で開眼! 雄平(ヤクルト)「一度死んだ男」の意地

週刊現代 プロフィール

慣れ親しんだマウンドを降りることに抵抗がなかったわけではない。転向を打診された雄平は悶々とした日々を送っていた。

「僕はピッチャーで野球を終わりたかった。だから、もう野球は終わりかな、という気持ちがありました。

そこで結婚したばかりの奥さんに相談したんです。〝野手でやってみないかと言われたんだよ〟と。相当、落ち込んだ声だったと思います。

奥さんの答えは〝そんなチャンスもらえるんだったら、絶対やった方がいいわよ〟。その言葉で気持ちがスーッと楽になっていった。あの一言が全てだったと思います」

もともとバッティングには定評があった。筋肉質の体から弾き出される打球は野手顔負けだった。

現一軍チーフ打撃コーチの杉村繁は、早い時期から雄平に打者転向を勧めていた。

「あれは'05年の4月ですよ。京セラドームの阪神戦で先発し、打ってはバックスクリーンにぶち込んだんです。あれにはびっくりしました。

雄平に〝オマエ、打者に転向したら1億円もらえるぞ〟と言ったら〝いや、3000万円でもピッチャーやりたいです〟と。それだけピッチャーに思い入れがあったんでしょうね」

海の向こうで活躍する青木宣親(ジャイアンツ)、7年連続で打率3割以上をマークしている内川聖一(ソフトバンク)、昨季の最多安打・山田哲人らを育てた杉村に対する評価は高い。球界屈指の名伯楽だ。

その杉村に雄平のバッティングを解説してもらった。

「左バッターは大きく二つにわけることができるんです。ひとつは青木のようにボールの軌道にバットを入れるタイプ。線で打つタイプと言っていいでしょう。

もうひとつは軸足に体重を残し、ガツンといくタイプ。典型的なのがメジャーでホームラン762本のバリー・ボンズです。雄平は、どちらかといえばボンズタイプでしょうね。

ボールに真っすぐ当たればライト、振り遅れてもレフトに行く。将来的には3割、30本塁打、30盗塁を目指せるバッターですよ」

理想の打球を求めて

ヤクルト戦のテレビ解説の多い金村義明も雄平のパワーには脱帽する。

「アイツのフリーバッティングを見ていたら驚きますわ。手首折れるんちゃうか、というくらい豪快なスイングしますから。外国人のラスティング・ミレッジなんかよりも迫力がありますよ」