【二宮清純レポート】首位打者を目指して今日も打つ 秋山翔吾(西武ライオンズ)が大化けしたのはなぜか?

週刊現代 プロフィール

翔吾を幸二に紹介したのが当時の一軍ヘッド兼打撃コーチ土井正博だ。

「今度ウチに入った秋山だ。よろしく頼むな」

ソフトバンクとのオープン戦でのひとコマ。鷹の指揮官は短く返した。

「そう、頑張って」

それだけだったが、ささいな一言でもルーキーにはありがたかった。

「もうガチガチに緊張していたので、何を話したのかあまり覚えていないんです……」

秋山は開幕スタメンに名を連ねた。西武の新人外野手としては岡村隆則以来、30年ぶりの快挙だった。2戦目には3安打の猛打賞を記録した。

しかし、プロは甘くない。苦手なインコースを攻められ、4月末には二軍落ちも経験した。

土井の回想。

「プロのピッチャーは特に新人に対しては積極的にインサイドを突いてくる。最初の頃は真っすぐに差し込まれ、引っ張り切れなかった」

打撃コーチとしての土井の実績はダテではない。教え子の中には、清原和博、松井稼頭央、和田一浩と3人の名球会選手がいる。

名伯楽は内角攻めに苦しむルーキーに、どんなアドバイスをしたのか。

「右手でバットを払う打ち方を教えたんです。両腕と体との三角形を小さくし、体の回転で弾き飛ばす。この打ち方をマスターしてから引っ張れるようになったんです」

独特のトレーニングも課した。右半身、つまりピッチャーに近い側の手足に防具をつけさせ、土井自身が至近距離からボールを放る。それを見極めさせるのである。

土井本人に詳しく説明してもらおう。

「キャンプでの夜間練習。ティーバッティングの要領で下から、僕がボールを放る。そして、やさしく体にぶつけるんです。防具をつけているからケガはしない。もちろん逃げちゃダメ。

なぜ、こんな指導をやらせたのか。新人のバッターは必ず、洗礼を浴びる。インコースの厳しいところを攻められ、恐怖のあまり、体が開くようになる。結果として、外のボールがより遠くに見えるようになる。