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カンヌライオンズ2015レポート【4】
石井 うさぎ

「3つの単語」が世界でたった1つの住所に

日本にいるとなかなか実感できないが、世界ではまだ「住所」が十分に与えられていないエリアが多くある。世界の75%の地域では、住所がないか、非常に精度の低い住所しかなく、行政やビジネス、教育、日常生活などに大きな障害となり、無駄なコストを生む原因にもなっている。

特に発展途上国では、小さな家屋が多く建っている都市部でも、そのような場所がまだ残っており、水や食糧、医療などが提供されない原因となって、人々の命を脅かしている。

そんな問題を解決すべく、イギリスのスタートアップ「what3words」社が行っている「スリー・ワーズ・トゥ・アドレス・ザ・ワールド」(3 Words to Address The World)というプロジェクトが、今年のイノベーション部門でグランプリとなった。これは、「全世界のあらゆる場所の住所をたった3つの単語で示す」ことを目指したものだ。

街や通りの名前、番地などで表す従来の住所は、世界のニーズを満たしていない。かといって、あらゆる場所を緯度と経度で表すのも現実的ではない。そこで全世界を3m四方の正方形に細かく分け、そのすべて(合計57兆個)に、3つの単語をランダムに組み合わせた名前をつける。「table.chair.lamps」「down.salad.hunter」「karaoke.novice.doing」……といった関連性のない3語の組み合わせが、それぞれ地球上でたった一つの9㎡の場所を示す住所になるのだ。

 What3words "3 Words To Address The World"

この技術は10MBのサイズにパッケージングすることができ、スマホなどモバイル端末で操作することが可能だという。what3wordsの共同創業者兼CEOクリス・シェルドリック氏は「非常に正確で、信じられないほどシンプルで、記憶しやすく、誰もが使えるもの」と誇らしげに語っている。

実際、個人が使ったり行政サービスを効率化したりするだけでなく、タクシーや宅配、旅行業、マイクロファイナンスなどのビジネスにも、この“まったく新しい住所”は大きく活用できそうだ。

ちなみにこの部門の審査員団の中には投資家が2人いて、さかんに「投資に値するビジネスなのか?」「巨額の利益が上がる規模までどうやって大きくするのか?」といった質問をしていたという。そういう厳しい指摘を浴びながら最優秀に選ばれたのだから、ビジネス面でのポテンシャルも相当なものがあるのだろう。