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カンヌライオンズ2015レポート【4】
石井 うさぎ

幸せな養子縁組を実現する

同じくこの部門で金賞となったのが、ロシアの慈善財団「チェンジ・ワン・ライフ」のプロジェクト「ツイン・ソウルズ」(Twin Souls)だ。これは、孤児を養子縁組させる際に、養親となる人たちとのよりよいマッチングを目指して実施された。

ロシアでは今、年間約1万5000人の孤児が養子として引き取られるが、31%の子が新しい家庭にうまく溶け込めず、養護施設に戻されてしまう。その主な理由は「養親と顔が似ていないから」というもの。しかし、いったん養子にされながら、縁を切られて再び施設に戻される子供たちが受ける心の傷、疎外感、孤独感は計り知れない。

その問題を解決すべくスタートした「ツイン・ソウルズ」では、まずロシア全国で孤児たち8万人のプロファイル(顔写真や動画を含む)を作成。次に、養親になりたい人たちに自分の顔写真をウェブサイトにアップしてもらい、顔認証テクノロジーによって「似た顔」の子供を選び、紹介する。もし、養親希望者がその子に興味を持ったら、プロファイルを見せ、さらに乗り気になったら養子縁組のプロセスを始める、という流れだ。

 Change One Life "Twin Souls"

このプロジェクトはさまざまなメディアを通じてロシア中に告知され、公開された宣伝用PVは3日間で38万7000人が見たという。ロシアでの養子縁組のリクエスト数は5倍に増え、「今や何千という家庭が子供を迎えて幸せになろうとしています」と動画のナレーションは自信たっぷりに語る。

このクリエイティブ・データ部門の評価について、審査員長のデイヴィッド・セイブル氏に私が「今後、クリエイティブとデータが交差する分野に必要とされるスキルセットは何でしょうか?」と質問したところ、「データをきちんと使うというのは、クリエイティブ系の人間には今まであまりなかった姿勢だが、これからのクリエイティブの人間はデータがわからなければ生き残れないし、データ側の人間もクリエイティブを理解していなければ明日はない」と答えてくれたのが印象的だった。未来の広告の姿を考える上で重要な指摘と言えるだろう。