元手をかけずにスーパーボウルを"ジャック"したボルボの画期的なキャンペーン

カンヌライオンズ2015レポート【4】
石井 うさぎ

スーパーボウルをSNSでジャック!

この「ライブ・テスト・シリーズ」や前述した「ライフペイント」(連載第1回参照)など、近年のボルボの広告は好調だが、実は今年もう一つ、「ダイレクト部門」でもグランプリを獲得している。

ダイレクト部門とは、企業から個人に一対一で届くダイレクト・マーケティングの点で優れたクリエイティブを評価するもので、最優秀賞に選ばれたのは、ボルボの「インターセプション」(Interception)というキャンペーンだった。

毎年、アメリカで最も盛り上がるスポーツイベントと言えば、アメリカンフットボールの「スーパーボウル」だが、これをSNSで“ジャック”したのがこのキャンペーンだった。スーパーボウルのテレビ中継では、いつもさまざまな車のCMが流れる。ところがボルボは今年、スーパーボウルの中継に一切CMを出さなかった。

そのかわり、他の自動車メーカーのCMが流れたら、視聴者がすかさずハッシュタグ「#volvocontest」を使って、ボルボの車をプレゼントしたい大切な人(家族や友人など)の名前を書いてツイートする、という仕組みを作った。これが抽選への応募となり、当選すればその大切な人に車が贈られるというものにしたのだ。

Volvo “Volvo Interception”

通常、スーパーボウルにCMを出すには、3~4億円程度の広告費がかかると推定される(実際、ボルボ以外の自動車メーカー各社が今年のスーパーボウルにかけた広告費は、合計約72億円だったそうだ)。しかし、このボルボのキャンペーンではそういうコストはまったくなし。

他社のCMに“コバンザメ”的にくっついてスーパーボウルをジャックできたわけで、まさしくインターセプション(アメフトで守備側の選手が攻撃側のパスを奪うこと)の名にふさわしい。「ウォールストリート・ジャーナル」紙はこの成功を「ツイッター・タッチダウン」と評した。

割と単純な手法で、絶大な販促効果を上げただけでなく、顧客情報の膨大なバックエンドデータも得ることができた。スマートで戦略的で斬新なやり方だということで、企業イメージも向上した。ボルボにとっては一石何鳥にもなったキャンペーンだった。