世界中の人をクリエイターにし、世界中の街角を写真ギャラリーに変えたアップルのキャンペーン

カンヌライオンズ2015レポート【3】
石井 うさぎ

ジーター引退時のキャンペーン

過去にも目を向けるという点では、「インテグレーテッド部門」でグランプリに輝いた作品も非常に印象的だった。

インテグレーテッド部門とは、多様なメディアで同時に行った広告キャンペーンを統合的に評価しようというもので、グランプリ受賞作はナイキの「RE2PECT」。昨年、ニューヨーク・ヤンキーズの大選手デレク・ジーターの引退に当たって制作されたものだ。

コアとなるアイディアは、「ジーターのこれまでの偉大な功績に対し、みんなでキャップや帽子を軽く持ち上げることで敬意を示そう」というもの。タイトルが、「RESPECT」(尊敬)の「S」の代わりにジーターの背番号「2」を入れたものであることは、説明するまでもないだろう。

CMの中で帽子を持ち上げているのは、マイケル・ジョーダン、タイガー・ウッズ、スパイク・リー(映画監督)、ビリー・クリスタル(俳優)、マイケル・ブルームバーグ(元ニューヨーク市長)といった有名人たちと、ヤンキー・スタジアムで観戦するファンや街中の警察官、消防士、そして多くの一般市民たちだ。

Nike “RE2PECT”

世界中にバイラルで広がったので、日本でもご存じの方は多いと思う。単語一つでキャンペーンスローガンになっている強さ、一緒に帽子を持ち上げるという行動で人々に連帯感を感じさせる効果、「ジーター」と聞いただけでパブロフの犬のように帽子に手をやりたくなってしまうほどの意識への浸透など、このキャンペーンの成功の理由はいくつもある。

ただし、それも、「過去に目を向けて、立派な功績を挙げた人や出来事を賞賛する」という姿勢への共感がベースにあるのは間違いない。