コンピュータに「面白い小説」は書けるか? 「機械派」作家と「魂派」作家が白熱討論!

人間はいったい何に感動しているのだろう
海猫沢めろん, 今村友紀

「人間らしさ」も単純なパターンかもしれない

今村 とはいえ読者の感覚の問題なのだとしたら、やりようはある。人間らしさというとかっこいいけれど、実はそれもすごく単純なパターンかもしれない。

私はツイッターをやっていて、毎朝「おはようございます」とつぶやくようにしています。実はそれはボット(プログラムによる自動書き込み)なんですが、ほとんど気づかれない。なぜかというと、毎日時間をランダムにずらしているから。不規則に「おはようございます」とつぶやくだけで人間の行為だと思われる。私が毎朝7時にきっかりつぶやいていたらおそらく多くの人はボットだと気づくでしょう。

もし、人間と機械を見分けるのがその程度のことであるなら、いったい人間らしさって何なのでしょうか。人間らしい魂が大事だといっても、結局は「人間らしさ」というパターンを信じているということ。繰り返しになりますが、そこにパターンがあるなら、再現できるわけです。

海猫沢 面白いですね。でも機械にはやはりできないだろうと思うものもあります。プラスでもマイナスでもない表現です。

今村 たしかに、同時に2つの値をとる状況を扱うのは難しいですね。

海猫沢 ゼロでもイチでもないけれど、ゼロでもイチでもある。文学で重視されるのは、そういう抽象的なこと。そのはっきりしない何かこそ、皆が魂だと信じているものだと思う。文学の世界では単純なハッピーエンドや、善悪がきっぱりしているものは、必ずしもよいとはされません。量子コンピューターが実現すれば別ですが、あいまいな状態を表現するのは、今の機械は苦手なんじゃないかな。

今村 でも、はっきりした状態が分かるなら、はっきりしない状態がどういうものかも決まる。読み手の反応が蓄積されていけば、定義できそうな気もしますね。

海猫沢 なるほど。でも、そうやって分析しすぎると、感覚的なところから離れていってしまうような気がします。おおざっぱに本質だけを抜き取るほうが、脳が面白いと感じる状態を再現できるのでは。

今村 本質を抜き取るというのは、面白いことに、私が機械でやろうとしていることの神髄と全く同じです。

海猫沢 そうなんですか。具体的にどんなことを?

今村 機械の力を何に使うかといえば、「要約」です。作品において人が面白いと感じるポイントをうまく抽出する。人間が何かを要約すると、たいてい個人の思い入れやバイアスが入り込み不正確になったりします。むしろそうした部分を機械に担わせることで作品の質が上がるのではないかと考えています。実際に書く時にこの単語を使ってはどうか、というようなことを一言一句分析するのではなく、ストーリーの構造といった抽象的なレベルで分析するわけです。