コンピュータに「面白い小説」は書けるか? 「機械派」作家と「魂派」作家が白熱討論!

人間はいったい何に感動しているのだろう
海猫沢めろん, 今村友紀

作家の葛藤

海猫沢 僕もこういう試みは、すごく興味があります。でも小説家は、今までと違うものをやりたいという気持ちもある。解析結果がどうであれ、ハッピーエンドばかりあれば、逆のことをやりたいと思っちゃう。

海猫沢めろんさん

その時に、解析の結果によると売れません、と出たらどうするのかという問題も出てくる。「クランチノベルス新人賞」(*1)では、受賞者を複数選んだ後で、解析結果なども利用して小説を完成させたそうですが、受賞者は「でも俺、違うふうに書きたいんだ」とは言わなかったですか?

今村 作家によっては葛藤もありましたね。もっともやもやしたものを届けたいというようなことです。

海猫沢 では、プログラムを作ったことで、いままで全く知らなかったことを発見した、という面ではどうでしょう。僕は最近、人工知能(AI)や最新科学の取材をたくさんしているんですが、日立研究所の矢野和男さんという方が書いた『データの見えざる手』という本の中に、面白い例があります。

あるお店で、人工知能と、人間のコンサルタントチームに、売り上げアップを競わせる。人工知能にやらせると、人の配置場所などの指示だけが出てくる。理由が全く分からない。でもそのとおりにやってみると、人間では売り上げが全然あがらなかったのが、人工知能のほうはあがったというものです。

後から調べてみると、確かにその時間帯に店内で重要な人の流れが、その場所に集中しているなど、発見がある。そういう発見が、小説のプログラムでありましたか?

今村 実のところ、それはあんまりなかったですね。いま挙げられた実験は、ビッグデータと呼べるほどの大量の情報に基づいています。今、私が取り組んでいる小説のデータは数百から数千作品、言葉にして数千万語なので、それほどの数がなく、いわゆるビッグデータではありません。少ない数からパターンを発見する統計学の手法を使っている段階なので、こちらが考えた仮説を検証するためにデータを使っていまです。

海猫沢 実際にそれを使って書いた本が出たら、効果のほどが分かりますね。