両親が明かした芥川賞芸人「又吉直樹」という男

泣いて、笑える!貧乏だった少年時代、恥ずかしがり屋だけどお調子者
週刊現代 プロフィール

〈実際に僕の家は裕福ではなかった。玩具の類は一切なかった。一日中、紙に絵を描いて過ごす日もあった〉

己敏さんが続ける。

「直樹が小学生くらいのころかな、親戚からファミコンをもらって遊んでいたんやけど、壊れてしもてな。それ以来ゲームや玩具は一切買ってない。でも直樹は文句を言うこともなかった」

隠し持った過剰な自意識

母・みよ子さんは「直樹は、うちが貧乏なのを子供ながらに感じていたと思います」と語る。

「家族で焼き肉屋に行ったとき、『お母さんらは焼き肉2枚でお腹いっぱいやから、あんたら食べな』と言ったんです。せめて私の分を子供に食べさせようと思って。すると直樹らは『お茶漬けだけでお腹いっぱいや』と言うんです」

親に気を遣ってか、又吉が欲しい物をねだることは、決してなかったという。

「小3からサッカーを始めたんですが、練習後に父兄が差し入れたジュースにも手を出そうとしなかった。本人は、物を欲しがることに、何か罪悪感のようなものを持っていたのかもしれません。

自転車を買ってあげられなくて、友達がみんな自転車に乗っている中、直樹だけが走って付いて回っていました。親としては申し訳ない気持ちがあったのですが、直樹は『おかげで走ったり歩いたりすることが苦にならなくなった』と言ってくれました」(みよ子さん)

芸人といえば、自分を前面に押し出してアピールする人間が多いが、又吉は静かな声で話し、いつも控えめに振る舞う。貧乏ゆえに物に恵まれなかったことが、又吉に「足るを知る」姿勢を与え、また頭の中で空想を膨らませるクセをつけたのかもしれない。

感情をあまり表に出さないが、又吉は幼い頃から過剰な自意識と格闘していた。そんな又吉が太宰治の『人間失格』を読んで衝撃を受けたのは中学2年の頃。太宰に激しく共感した理由は「自意識の在り方」がまるで自分を見るようだと感じたからだという。この頃から又吉は、一気に読書に目覚めていく。

しかし、みよ子さんによれば、学生時代、又吉が読書に没頭していた印象は、実はほとんどないと言う。

「直樹は、少なくとも家に閉じこもって本ばかり読んでいる子ではありませんでした。どちらかといえば外で、サッカーをしていたイメージのほうが強かった」

たしかにサッカーは、又吉が学生時代に情熱を捧げたものの一つだった。中学卒業後、サッカーの名門として知られる北陽高校に進学する。