スッパ抜き「内定!」
新国立競技場「完成図」はこうなる

週刊現代 プロフィール

コスト面、技術面のバランスから見て、前回コンペの上位陣はザハ案と同じような問題と不安を抱えているものがあるということだ。それらと比べても伊東氏のデザイン案は相対的に優位に立っているといえる。

二つ目に、国立競技場の建設場所の特殊性が関係してくる。国立競技場は東京の中心にありながら周りを樹木に囲まれており、歴史的にも価値のある場所だ。神宮外苑の景観やその歴史、なりたちを無視しないでほしい、という声は根強い。だからこそ、外国人に頼らず日本人による設計を望む声も多い。

「ベイエリアに作るならまだしも、今回は神宮外苑という特別な場所に建てるわけです。周りを木々や建築物に囲まれた環境にどうスタジアムを溶けこませるのかは非常に重要なこと。伊東さんの案はその点がしっかり考えられていたと思います」(建築家で東京藝術大学名誉教授の元倉眞琴氏)

景観を無視して、巨大で近未来的なランドマークを建てることが正解ではない。それよりも周辺環境との調和やそこに住む人々のことを考えたデザインこそが、日本らしい「和」の建造物といえる。

実は最も評価が高かった

最終審査に残った他の作品を見てみると、伊東氏のデザインは一見、地味である。だが、そのような形状にはれっきとした根拠があると前出の森山氏が説明する。

「この中で実際に建てるとしたら、伊東さんの案しかない。応募案の中では、最も機能を優先したデザインになっています。

例えば、問題となっている屋根の開閉機構は実現性を高めるため水平可動にしています。ピッチの芝を健全に育成させる日光を確保するにはこれくらいの大型開口が必要なのと、ピッチに妙な影を落とさない工夫です。しかも、ザハ案に比べて全体的にコンパクトであり、高さも条件の75mよりもずっと抑えて50mになっている」

さらに伊東氏の案ではスタジアムの壁面に無数の穴が開いており、その周りを薄い透明膜が簾のように取り囲んでいる。壁面と透明膜の間には水辺や樹木からなる公共スペースが設置され、外からの風が通気性のある透明膜を通り、水で冷やされ、壁面の穴からスタンドまで通り抜ける構造となっている。天井に設置された太陽光パネル同様、自然エネルギーを活用し、メンテナンスコストを抑える試みだ。

この伊東プラン、そもそも先のコンペ途中までは最も評価が高かったという。

「一次審査の前に作品の実現性や募集要項の規定条件を満たしているかを確認する技術調査が行われました。可動席や屋根の開閉機構、工期など、全16項目を『○△×』の3段階で評価するのですが、この段階では伊東さんの案が全項目で『○』を獲得して最も評価が高かった。一方でザハ氏は『○』と『△』が半分ずつでした」(前出・森山氏)

ここでの「△」は「設計段階で重大な調整が必要」という評価。他の候補作品にもこのような応募条件を逸脱したものがあったという。