(新宿・ゴールデン街のとあるスナックにて)
編集者M あの、お二人の話が聞こえてきて、ぼく自分が「ハンパくん」なんじゃないかと思ったんですけど……。
二村 おお! なんとナイスタイミング。
川崎 まあまあ、ここに座ってください。お話を聞かせてくれませんか? お名前は? お仕事は何をしてるんですか? お歳は? すみません、質問攻めにしちゃって(笑)。
編集者M いえいえ、いいんです。Mと言います。某出版社に勤めていて、もうすぐ31歳になります。
二村 大手ですね。ハンパくんとは呼びづらいかも……。出身大学は?
編集者M 慶應です。
川崎 ハンパじゃない!
編集者M でも学歴コンプレックスがあって……何より、自分が普通であることにコンプレックスがあるんです。だから、「なんでも普通」というハンパくんの話が気になってしまって。
二村 ぼくらの想定していたハンパくんは、普通であることにコンプレックスすら持たない、自覚の薄い人たちなんだけど、MさんはMさんで悩みを抱えてそうですね。ハンパくんというよりは「こじらせくん」かな。
編集者M 自分が普通というコンプレックスがあるから、自分の欠点を補完しようと、癖のある変わった女性と付き合っちゃうんですよ。
川崎 これはいい展開ですね(笑)。例えばどんな女性?
編集者M 一つ前に付き合っていた彼女は、ほとんど勉強しないで東大に入っちゃうくらい頭がよくて、医者として稼いでいて、年収はぼくの倍くらいある女性でした。
二村 立派な人ですね。
編集者M でも酒ぐせが悪いんです。酔った彼女とドライブしていたら、いきなりサイドブレーキを引かれたこともあります。
二村 わっ!
川崎 ……それ、ヘタしたら死にますよ。