「サイエンスライター」とはどんな仕事? その存在意義を書きます

〈科学的な厳密さ〉と〈わかりやすさ〉の間
保坂 直紀 プロフィール

厳密さとわかりやすさは、ふつう、なかなか両立しない。そのどちらを優先するか。このとき、ためらわずに「わかりやすさ」を優先するのが、サイエンスライターなのだと思う。

ただし、そのさじ加減は難しい。厳密性をゆるめつつも、正確である範囲を外れないこと。わかりやすくて、かつ、専門家にも納得してもらえること。読者を「天動説」のままほうっておくわけにはいかない。

『謎解き・津波と波浪の物理』でも、波の物理学についての輪郭とエッセンスがきちんとわかるように工夫した。

研究した本人や専門家が語りかける本の説得力は、他に代えがたいものだ。これが、科学を伝える直球勝負の本だとすれば、もう一方に、さっきまでは自分にはムリと思っていた科学の話なのに、気がついたら、まるで魔法にでもかかったようになじんでしまっている、そんな本もあってよいのではないか。

知識をつくるプロが書く本と、伝えるプロが書く本。その両方があいまって、科学の知がもつ豊かさをもっともっと楽しむことができるようになれば、とてもうれしい。

読書人の雑誌「本」2015年8月号より

保坂直紀(ほさか・なおき)
東京大学海洋アライアンス上席主幹研究員。東京大学理学部地球物理学科卒。同大大学院で海洋物理学を専攻。博士課程を中退し、1985年に読売新聞社入社。科学報道の研究により、2010年に東京工業大学大学院で博士(学術)を取得。2013年に読売新聞社を早期退職して現職。気象予報士

保坂直紀・著
『謎解き・津波と波浪の物理 波長と水深のふしぎな関係』
講談社ブルーバックス 税別価格:860円

サーファーがくぐる波のトンネルはなぜできる?「海底を感じた瞬間」に性質を大きく変える波。身近でふしぎな物理現象を解き明かす。

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