8月15日に戦争は終わっていなかった!
両親の体験をもとに“感覚”として戦争を写し取るマンガ

『あとかたの街』『凍りの掌』作者・おざわゆきインタビュー【前編】
おざわ ゆき

おざわ: 父は19歳の時に捕虜になりました。帰国できると言われて期待するもそれが実現しないということを繰り返すうち、若かった父は次第に帰国を諦めていったようでした。

収容所に入所する時に、履歴書のようなものを書かされるのですが、軍に召集される前は学生だったので書くことが何もない。技術を持っている職人が優遇されるのをうらやましく感じながら、「自分はこんなものだと思うしかなかった」と言っていました。

−−作中のロシア語には日本語訳がほぼついていません。ソ連兵が何を言っているかわからず、不安を感じる捕虜の人達にシンクロしながら読みました。

おざわ: 捕虜になった人達が、段々と言葉がわかるようになっていく過程を描こうという意図があり、あえて訳をつけませんでした。最初はまったくわからないので「×××」。そのうち単語を理解できるようになると日常会話にロシア語が交ざってくる。そして最終的に文章を理解できるようになると、ソ連兵と交渉を行うまでになっています。今回、新装版の刊行にあたり、訳をつけるかどうか悩みましたが、当初の考えを貫きました。

−−新装版では、部分的に加筆修正した部分があるとうかがいました。

おざわ: 執筆当時、抑留者の方の年齢は80歳くらいでした。2015年の今、ほとんどの方が90歳前後になっていらっしゃるので、事実にあわせて修正しました。

−−確実に時間が経ち、当時の話を聞く機会が失われていることを実感します。

おざわ: そうですね。今はまさに瀬戸際です。うちの父は今年で90歳、母も83歳になりました。皆さん大変お元気ですが、毎年1割ずつ亡くなられています。いつ途切れてしまうかわからない状況の中、捕虜だった方たちも「今語り継がなければ、自分がいなくなった時に自分が体験した事実もなくなってしまう」と危機感を抱いているんです。