【戦後70年特別企画】
元零戦搭乗員たちが見つめ続けた「己」と「戦争」【後編】

『零戦 搭乗員たちが見つめた太平洋戦争』著・神立尚紀インタビュー
若き日の大原さん。終戦時は上飛曹

―印象に残っている大原さんとのエピソードはありますか?

たくさんありすぎて困ってしまいますね・・・・・・。初めてのインタビューを終えて、私が自宅に戻ると、玄関ドアを閉めると同時くらいに電話が鳴ったんです。出ると大原さんで「無事着いたか?」。

大原さんの自宅は北久里浜(横須賀市)で、私の自宅からは2時間くらいかかるんです。それで心配してくれて帰宅する頃合いを見計らって電話してきたんです。こちらは恐縮してしまいましたが、おかげでそれ以来、大原さん以外の方でも取材を終えて自宅に戻ったら、私から御礼の電話を入れるという習慣が身につきました。

とにかく気遣いの細やかな方で、私が会っておいた方がいい人がいると、さりげなく紹介してくれたり、見ておいた方がいい場所があるとその都度誘ってくれる。おかげで、飛行機の本物のフライトシミュレーターで操縦も体験させてもらいました。

二人で一緒に三菱重工の小牧南工場(愛知県)に行ったこともありました。ここの史料室には復元された零戦が展示されているんです。

新幹線とタクシーで移動したんですが、その日の大原さんは体調が思わしくなくて、車中でも顔色が悪かったんです。私は内心連れ出したことを後悔しました。でも、そんな大原さんが、工場に着いてタクシーを降りたとたんに「B29発見!」と叫んだんです。笑って見上げている大原さんの視線の先を追っても私には何も見えない。しばらくすると高度を下げてきた旅客機の機影がポツンと見えてきました。

大原さんには「あれが見えないようじゃ、戦闘機乗りにはなれないな」と言われてしまいました。飛行機を前にすると元気になっちゃうんです、大原さん。これは敵わないな、と思いました(笑)。