衰えぬイスラム国の勢い 
「極なき」無秩序時代をどう生きるか

菅原 出

「極なき」無秩序時代をどう生き抜くか

2001年の9・11同時多発テロ事件以降は、主に米国のアフガニスタン戦争やイラク戦争を取材。米国が圧倒的な軍事力で既存秩序を破壊した後の権力の空白から大きな混乱が生じ、その混乱の中からISの前身にあたるアルカイダ・イラク(AQI)が生まれ、強大化していく過程をつぶさに見た。

オバマ政権になってからは、アフガニスタンやパキスタンで対アルカイダ、対タリバン戦争の最前線を取材し、政権側の「成功」発表の裏で、テロの脅威が増大し、拡散している実態に警鐘を鳴らした。

そしてこの間、英国最大の危機管理会社の日本法人メンバーとして、海外の危険地域に進出する日本企業のセキュリティ対策に携わった。同社に所属する英特殊部隊のOBたちから、武装襲撃や爆弾テロ等の脅威のある危険地域でいかにクライアントを守るべきか、プロの危機管理術を学んだ。

明けても暮れてもアルカイダ、タリバンやAQIなどの情報を追いかけ、アフガニスタンから南スーダンまで世界の不安定地域を訪ね、国際安全保障情勢を分析してきたが、いまほどテロが蔓延し、無秩序と混乱が広がる世界は見たことがない。

世界は未曾有の混乱期に突入している。米国による一極支配の時代が終わり、世界は「極なき」無秩序時代に入っている。『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』(講談社現代新書)で詳述したように、ISはこの何でもありの時代が生んだモンスターである。

これに対してオバマ政権は、アルカイダを弱体化させたのと同じ手法のテロ対策を実施しているが、ISはすでに伝統的なテロ組織の範疇を越え、一定の領域を統治する「国家」のような存在になっている。そしてその「国家」を1年以上存続させることに成功し、さらに「国家」の影響力を拡大させるべく世界にテロを「輸出」している。

このようにテロが蔓延し、不安定化する世界で、我々日本人はどうしたら自らの安全を確保することができるのか。

最も重要なことは、「脅威を知る」ことである。敵の能力や意図を調べ、自らの弱点を精査することで、何をすべきか、何をしてはいけないのかが明らかになる。

テロの脅威を過剰に恐れてはならない。現実のリスクを客観的に評価し、日々のリスク軽減策を地道に積み重ねながら、海外での活動に取り組むタフさが求められている。

読書人の雑誌「本」2015年8月号より

菅原出(すがわら・いずる)
1969年東京生まれ。中央大学法学部政治学科卒。1994年よりオランダ留学。1997年アムステルダム大学政治社会学部国際関係学科卒。国際関係学修士。在蘭日系企業勤務、フリーのジャーナリスト、東京財団リサーチフェロー、英危機管理会社役員などを経て、現在は国際政治アナリスト

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菅原出・著
『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』
講談社現代新書 税別価格:760円

なぜISの勢いは衰えないのか?
関係各国の思惑とは?アメリカの決定的失敗とは?
これからのキーワードは「フランチャイズ化」と「一匹狼型テロ」。「敵」となった日本と日本人の自衛策は?
テロ対策の専門家として、イスラム過激派の動向をウォッチし続けてきた著者が、ニュースではわからない真実を明らかにする。

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