自民党の中を変えれば新しい政治ができる! 元日銀・オックスフォード卒の若手議員が政界に入った理由

オックスブリッジの卒業生は、いま
オックスブリッジ卒業生100人委員会

政治家・小倉將信が誕生するまで

―オックスフォードから戻られた後、日本の政治に対してどのような印象を持たれたのでしょうか?国政に進まれるきっかけになったような問題意識を教えてください。

帰国後に配属された部署では、主に国内に拠点のある外国銀行の資金流動性の管理を行っていました。帰国した2009年当時はまだリーマンショックの余韻が冷めやらぬ中、外国銀行は国内のマーケットで円の調達が難しくなっていました。日本銀行として、流動性危機が発生しないようにモニタリングを行い、万が一資金が調達できない場合には、補完貸付けを行うといった対処を行うことになっていたので、大変な緊張感を持って仕事にあたっていましたし、こうしたエキサイティングな仕事に対するやりがいは感じていました。

その一方で、日本の経済政策に対する強い問題意識を感じていました。オックスフォードではイギリスの経済政策に対する知見を得る機会が多くあり、これにより日本の抱える問題点が明確になりました。一言で言えば、イギリスの経済政策は非常に大胆だと思います。1960年代以降、イギリスは、「英国病」と言われるくらい、経済が停滞していましたが、サッチャー元首相の改革によって、国営企業の民営化等による歳出の削減を行い、国内産業をものづくり(ハード)から金融のようなソフトに切り替える政策を行いました。

この結果、自国通貨であるポンドは高くなって輸出産業はダメージを被ったけれども、海外から優秀な人材を集めることに成功して金融等は成長したんです。イギリスとしては、同じものづくりをしていても日本やドイツには敵わないし、その後ろには中国や韓国が控えている、だったらイギリスが昔から得意としてきた金融や法務サービスに注力して、今後はこういったもので国民を食わせていこう、という国家の意志があったのだと思います。

リーマンショック後に誕生した現キャメロン政権では、一時的な経済対策は行いましたが、その後、もの凄く大きな緊縮財政を発表しました。これにも、財政を健全化してポンドの信認を維持する、民間の力を活用する、といった国家としての意志がきちんと感じられ、国の政策として一本筋が通っています。

―翻って、日本の経済政策はコンシステンシー(一貫性)が感じられなかった、ということでしょうか?

長らくデフレに苦しんできた日本では、経済財政政策を行うにせよ、個々の政策を小出しにしたり、実施しても途中で引っ込めたりと、場当たり的な対応が多く、大胆さが欠けているように思っていました。企業もデフレ下では、投資をしても売上げが伸びないので、じっとしていて何もしない、人件費を削ってキャッシュを溜め込んでいた方が、むしろ企業価値が上がるという状態だったのです。こうした何もしない方が得をするという経営マインドを変えない限りは、デフレからの脱却は見込めないと感じていました。今、安倍政権では、デフレ脱却に向けて大胆な政策を行っています。よく、金融緩和をしてもデフレは脱却しないと言う人がいますが、政府と日銀が同じ方向を向いて相当強いメッセージ(大規模金融緩和を含めて)を出さないと、デフレマインドを変えることはできないと思います。

―こうした問題意識から自民党の公募に応募されたのでしょうか?

「日本銀行での仕事はやりがいはあるけれど、自分の代わりになる人間はいっぱいいるだろう。だったら、いっその事、混乱を極める政治の世界で自分が誰かの代わりになった方が社会に対してできる貢献が大きいのではないか。」といったような思いを口に出したときに、たまたま知り合いの人が、だったらこういうのがあるといって教えてくれたのが、自民党の公募だったのです。

政治家は個人商店なので、基本的には自己の考えの基に行動するものですが、それが政党や政権という組織になった場合には、組織人としての立ち居振る舞いが求められます。これが出来ないとどうなるかは、民主党政権においてよくわかったことだと思います。もちろん自民党にもいたらないところが多くありますが、この国の政治を変えるには自民党を中から変えるのが一番早いのではないかと思うようになり、自民党を選びました。自民党は古い看板かもしれませんが、中にいる人が大きく変われば、新しい政治ができると思います。

未来のオックスブリッジで学ぶ学生へ

―最後に、オックスブリッジの未来の学生に、小倉先生からメッセージをお願いします

私の場合、留学期間は1年でしたが、それでもオックスフォードでの経験は、今の政治家としてのキャリアを決める大きな要因になりました。いる時に辛いなと思うことはありましたが、戻ってからは行って良かったと常に思っていますし、是非多くの人にオックスブリッジにチャレンジしてもらいたいです。国としても、海外で勉強したい若者を応援する「トビタテ!留学JAPAN」というキャンペーンを民間と一体となって行っています。こうした若者の中から、幕末にヨーロッパに留学し、維新後は明治政府で大きな役割を担った長州ファイブのように国の中枢を担うような人物が現れることを願っています。

<インタビュー後記>
小倉先生の語る、イギリスでの生活に関する苦労話やイギリスから見た日本については聞き手の2人とも在学中を思い出し、大いに共感しました。また、ユーモアに富んだお話の中に、政治家・小倉將信としてのプリンシプルを強く感じました。小倉先生同様、物事を多面的に見て経験し、視野の拡い現代の「長州ファイブ」が現れることを願うばかりです。

※本インタービュー記載の考え方は小倉先生のものであり、インタビューアー及びインタビューアー所属機関を表しておりません。

国会前にて
小倉將信
オックスフォード大学院修士(金融経済学)卒業

東京大学卒業後、日本銀行に入行。オックスフォード大学院に留学後、自由民主党の候補者公募に合格し、2012年12月東京23区(町田市・多摩市)で衆議院議員初当選、2014年12月2期目当選。衆議院財務金融委員会、環境委員会、予算委員会、消費者問題特別委員会の委員を歴任。党においては内閣部会副部会長、青年局次長、国際局次長を兼務。国際金融を専門に、幅広い分野で活動中。
高岡美緒(聞き手)
ケンブリッジ大学Natural Sciences(物理)学部卒業後

ケンブリッジ大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。外資系投資銀行他2社を経て、現在はマネックスグループ株式会社執行役員新事業企画室長兼マネックスベンチャーズ取締役として新規事業開発及びコーポレートベンチャーキャピタルの運営を担当。
千野剛司(聞き手)
オックスフォード大学院修士(MBA)卒業

慶應義塾大学卒業後、株式会社東京証券取引所に入社。同社派生商品部、株式会社日本証券クリアリング機構企画業務グループを経て、2014年オックスフォード大学MBA卒。2014年10月より、株式会社日本証券クリアリング機構にて、同社の経営企画及び店頭デリバティブ業務における制度企画等に従事。

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                                                    オックスブリッジ100人委員会より