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大阪桐蔭「プロで活躍する」ための人材育成法

中田翔・中村剛也・森友哉・浅村栄斗・藤浪晋太郎…
週刊現代 プロフィール

60人の個性がグラウンド上で火花を散らすのが、実践的なシート打撃だ。西谷監督は、通常のカウント0-0だけでなく、1-2や3-0からはじめるなど、状況を設定した練習を増やしている。

「打撃には、2ストライクまでの打撃と、追い込まれてからの打撃がある。追い込まれてからしっかり打つ練習と、2ストライクまでは思い切って振る練習の、両方が必要です。どんな打者も結果が出ないときは、消極的になる。その中でいかに受け身にならないか。攻めの気持ちで振り続けるためには、準備が必要です。

サッカー、バスケットボール、ラグビーなど他の球技は攻撃側がボールを持ちますが、野球では守備側の投手がボールを持つ。打者が攻撃するといっても、投手が投げて始まる、『受け身』です。そこで気持ちが受け身にならないようにどうするか。つきつめると、1球目から振っていく準備をいかにするかだ、と考えています」

前出の辻内は3年時に、シート打撃で当時1年生だった中田と対戦。のちに巨人にドラフト1位入団した左の剛腕と、その2年後に日本ハムに1位入団した大砲による豪華対決。辻内が振り返る。

「夏の大会前の5月になると、シート打撃の練習が多くなる。中田との初対決で打たれたことだけはよく覚えています。レフトフェンス直撃。中田は、入ってきた時から体がすでにできあがっていて、モノが違う、と思っていました」

10年前のことでも、記憶が鮮明に蘇るほどの真剣勝負によって、課題がわかり、反骨心も生まれる。必要以上に教えられることがないため、自ら頭を使って解決策を見つけるしかない。

オフには先輩が帰ってくる

監督、コーチが細かい技術指導を行わない大阪桐蔭では、「人」が最高の教科書となる。PL学園出身の米村スカウトが明かす。

「私の高校時代、全体練習を終えて一息ついた夜10時くらいから再び練習がはじまる『伝統』があった。寮の部屋の先輩の個人練習を手伝うのですが、先輩の練習後、逆に先輩から教えてもらえる。『こうしたほうがいいぞ』というちょっとしたアドバイスが、ものすごく身につくんです。今の大阪桐蔭を見ていると、かつて最強を誇った頃のPLに似た流れを感じます」

西谷監督も、よき伝統ができあがりつつある手ごたえを、感じている。

「中田が高校生のときから、プロ選手が、母校でなら練習できるようになったことが大きい。オフには必ず、OBが帰ってきて練習をしてくれる。現役の高校の選手にとっては、そのプロ選手はテレビの中の憧れの選手であり、自分たちと同じ練習場で汗を流した先輩でもある。その選手が打ったり、投げたりするのを見て、大学やプロのレベルを肌で知る『物差し』になるんです。

中田がいた3年間は、中村もまだ独身で彼の実家も近いので、オフはうちのグラウンドでじっくり練習していた。その中田が中村に刺激を受け、あそこまで成長した。だから、中田も毎年、帰ってきてくれます。大阪桐蔭はまだ30年ほどの学校ですけど、少しそういう『年輪』ができてきたのかな、と感じます」