「サラブレッドはかっこいいが、野ねずみの方が強い」私はこの言葉を、技術屋として胸に秘めてきました。

横河電機 西島剛志社長
バルブ '91~'92年頃、外部試験施設にて。バルブ用制御機器の開発実験を行った時の一枚

野ねずみ

「サラブレッドはかっこいいが、僕はそれよりも野ねずみの方が、より強いと思うわけです」―敬愛する土光敏夫さん(石川島播磨重工業や東芝の社長、経団連第4代会長を歴任)のこの言葉を、私は技術屋として胸に秘めてきた。打たれ強く、執念深く、あきらめが悪い。技術の進化は、これによりもたらされます。

たとえば20代の終わり頃、セラミック製のセンサーを開発した時のことです。瀬戸物(セラミックは陶器)の材料である粉末に白金の粉末を混ぜ、焼き固めて電気信号を通したかったのですが、異物を混ぜるとうまく焼き固めることができなかったのです。

しかし、1年以上も白い粉にまみれながら実験を繰り返すと、特許が取得でき、今なお売られる製品が本当に開発できたのです。物事は、うまくいかないことの方が多い。それでも野ねずみのように「ネバーギブアップ!」と唱え続けて頑張ることで地力が身に付きます。

夫婦で

趣味は家内と歩くこと。たとえば(本社がある)東京西部は、昔、土地が肥えていなかったためか、やせた土地でも育つそばの栽培が盛んでした。だから今でも、そば店が多いのです。こんなふうに目的地の店を決めると、電車を何駅か前で降り、家内と話しながらぽつぽつと歩くのです。また大震災以降、(社長室がある)オフィスの8階まで必ず階段を使って登っています。省エネと健康のためです。最初はキツかったのですが、人間、すごいものでじきに慣れました。

共に

「パッションは電磁波のように空間を伝播する」。最近、そう感じるようになりました。弊社が100年の長きにわたり発展してきた理由は単純。「お客様と共に歩む」ことと「困難から逃げないこと」なのです。お客様のプラントに課題があれば、自分たちが技術を身に付け、時にはパートナーを探して実現する。本当にお客様のためになると思えば、摩擦すら恐れてはいけない。弊社が事業領域をセンサーから経営管理にまで拡大できたことは、このパッションの結果なのです。だからこそ私は弊社が成し遂げてきた「プロセス・イノベーション」を「プロセス・コ・イノベーション」(コとは「共に」という意味)という言葉に置き換え、社内に浸透させています。

お客様と、その向こうにある社会を思えば、事業は必ずや発展する。それは単純ですが、力強い事実なのです。私はこれを、大きなガタイになった弊社の全社員と共有したい。だから私もパッションという電磁波の発生源にならなければ、と思っています。

(取材・文/夏目幸明)
『週刊現代』2015年7月18日号より

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日本一社長を取材している記者の編集後記

西島氏が労働感を語ってくれた。「“働く”とは“はた(周囲)”を“ラク”にすること」というもの。努力しても認められないことがある。理不尽なことも多い。しかしなお「はたをラクにできたのだから目的は達しているじゃないか」と考え、やってきたと話す。ただし、筆者は思った。人間、こっそりやっていることは、普段滲み出る。それは自信になり、信念になり、時には迫力となり周囲を圧しただろう、と。


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