「サラブレッドはかっこいいが、野ねずみの方が強い」私はこの言葉を、技術屋として胸に秘めてきました。

横河電機 西島剛志社長
初出張 '89年に、ドイツへ、会社員人生初の海外出張に行った時の写真。「展示会に出向いた」

物の理

大学では物理を学び、教師になろうと志した時もあったため、実は教員免許を持っています。しかしプラモデルや工作などモノ作りが好きで、技術者の道を選びました。当時学んだことで、長く役に立ったのは、物理に限らず化学から電気工学まで、様々な現象やメカニズムなど、物の理(もののことわり)を知ったことでした。何かが思い通りにならなかったら、なぜこうなったのか、どうすれば改善できるのか、仮説を立てて検証します。この時、専門的な技術だけでなく、広範な知識を持っていなければ、原因が化学的なものなのか、電気信号なのかなどがわからないのです。

ささやき

若い頃から様々なお客様のプラントを訪ね、アプリケーションの改良やチューニングをしてきました。社長になって営業と共にご挨拶回りをした時、伺ったお客様の工場は、ほとんど過去に行った記憶があったほどです。

当時の先輩に言われ今も覚えている言葉があります。「現象はすべて自然のささやきなのだから、どうしてこうなるのか、素直に受け止めた方がいいよ」と言うのです。改良やチューニングをする際には、仮説を立て、実証するのですが、人は自分が考えたことが正しいはずだと信じる方向でバイアスがかかります。思い通りの結果が出ないと、仮説は間違っていない、実験の方法や条件が悪かったのではないか、と考えがちなのです。しかし、現象は自然のささやき、ほとんどの場合、自分を疑った方が、早く、正しい結果に行き着けました。思えば、技術的な問題に限らず、すべてがそうでした。