日本は世界の大国でいられるのか? 元ゴールドマン・サックスのアナリストが見た日本の真の実力
インタビュー「書いたのは私です」デービッド・アトキンソン
―一方で、日本の強みはどこでしょう。
多様性ではないでしょうか。たとえば芸術で言えば、元々雅楽は古代中国の音楽ですが、本国では既に消えてしまったのに日本では生き延びている。このように日本は古いものを遺しながら、さらに、新しいものを加えている。時代劇と同時に漫画が人気な点もそうですが、これは世界的に見ても大変珍しい。
この多様性を上手に使えば大きな売り物になるはずですが、残念ながら現状はうまくいっていません。日本には珊瑚の海もあり、北海道のような平原もある。実に変化に富んでいるのに、その美しい姿をまだ活かしきれていない。統一感のない建物が目に入るため、ぶち壊しです。歴史的文化財など魅力的なコンテンツがあるのに、宝の持ち腐れに終わっています。
また、漫画やアニメは海外で人気があります。しかしそれは政府が「クールジャパン」と言い出す前からで、その意味で新鮮味には欠けますし、一定の人々がそれ目当てに来日するのは確かでも、何千万人と観光客が増えるわけではない。期待するような経済効果が得られるかは疑問ですね。
―元エコノミストの立場からアベノミクスに対する評価についてもお聞きできますか。
アベノミクスの恩恵が地方まで届かない、という批判は的外れです。500兆円の経済規模を考えればわずか2年程度で国中を豊かにしろというほうが無理な話。それを期待するほうが間違いでしょう。ただし、諸手を挙げて評価するかと言えばそれもNO。いまの段階でも成長戦略を示せていないのは、いかがなものでしょうか。
―株価の上昇傾向はこれからも続きますか。
大きく崩れたものが元に戻っているのであり、アメリカ株が史上最高値を更新し続けているのとは違うということは認識するべきでしょうね。いまの株価も、バブルのピークにつけた高値の半値程度に過ぎません。最近の上昇は、ドルで換算したらそれほどではない。むしろそれが世界的な評価ではないでしょうか。
現役日本人はここから激減していきます。イメージではなく、論理的にものごとを分析することが、いまの日本には大切。せっかくもっている強みを活かすためにも、そこから真剣に取り組むことを期待します。
(取材・文/平原悟)
『週刊現代』2015年7月11日号より
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