孫正義氏の年間役員報酬は1億3100万円。自分より10歳年下の若者に、自分の125倍もの報酬を与えたのは英断か、あるいは暴挙か。とかく世間を騒がせるこの男には、巧妙な狙いがあるようで。
1億6500万円でもなく、16億5000万円でもなく、165億円。
見たこともないし、どれくらいの重さになるのか想像もつかないし、普通は一生手に入れることのない超巨額。
そんな「3ケタ億」の報酬をもらうサラリーマンが、この日本に現れた。
ニケシュ・アローラ氏。インド生まれの47歳だ。
昨年9月に孫正義社長(57歳)からスカウトされてソフトバンク入りした彼が、今年3月までの半年に受け取った報酬が約165億円と判明した。
この一報は瞬く間に世界中に広がり、「事件」と呼んでも差し支えのないほどに話題の的となっている。
そして、日本でも世界でも、この一報を聞いて、みなが感じたことはほとんど同じだ。
いくら有能な人物だとしても、たった一人の人間に、半年で165億円もの報酬を支払うのは妥当なのか、と。
ソフトバンクグループのある幹部社員は、「さすがにやる気がなくなりました」と語る。
「私は自分なりに家庭やプライベートを犠牲にして頑張ってきたつもりです。もちろん、相応の給料はもらっていたので不満はありませんでした。しかし、外様の人間がいきなり165億円をもらうと聞けば、『俺の価値は彼の何分の1どころか、何千分の1以下にしか見られていないのか』と。人間とはなにか、人間の価値とはなにか。そんな哲学的な問いを考えたのは、学生時代以来ですよ」
社内からは少なからずこうした声が聞こえてくるが、無理もない。
高額報酬が当たり前の米国でも、2ケタ億円の年俸はあっても、3ケタ億円はあまり聞かない。
「米ブルームバーグのデータによれば、昨年、世界1位の年俸を得たのは米ウェアラブルカメラメーカーGoProのニック・ウッドマンCEOで、約340億円。2位が米メディア関連企業リバティ・グローバルのマイク・フライズCEOで、約170億円。アローラ氏はこれに次ぐ、世界3番目の高額報酬者とされています」(在米ジャーナリストの飯塚真紀子氏)
ソフトバンクグループの主力子会社であるヤフーの現役社員は言う。
「うちの従業員の平均年間給与は約650万円ですよ。単純計算すれば、アローラ氏はうちの全従業員のほぼ半数、約2500人分の給料をたった一人で受け取ったことになるんです。言ってしまえば、孫さんがアローラ氏を、うちの社員約2500人分の価値と同等とみなしたということでしょう。スーパーマンじゃないんだから、人間の価値にそんなに差ってありますかね」