米国を守れば「抑止力」が高まるなんてあり得ない!

米中のはざまで生きる日本のあるべき防衛戦略とは?
柳澤 協二

いかに政治的価値観が異なっていても、相手を破壊すれば世界経済が破壊される状況の下で、核の使用による相手の殲滅は、もはや合理的選択肢ではない。そこで、価値観の相違を管理するという問題意識が生まれてくる。これが、我々の直面するパワー・シフトであり、「新たな大国関係」の実相である。

米国に見捨てられるのでは?という恐怖

そこでは、どこまで行けば相手に懲罰を与えるのか、言い換えれば、軍事力によって何を抑止するのか、あいまいにならざるを得ない。

そこで、「米国のために血を流さなければ米国が助けてくれないのではないか」という「見捨てられの恐怖」が出てくる。

だが、日本を守るかどうかの判断は、すぐれて米国の国益に由来するものであって、「お互い様」の同情に発する判断ではない。したがって、「米国を守れば抑止力が高まる」という論理は、前提が間違っている。少なくとも、「戦争に巻き込まれることは『絶対に』ない」という命題は、絶対に誤りだ。

同時に、「自衛隊も日米安保も憲法違反だ」という論理も、日本の平和に対する回答になっていないばかりか、現実の脅威感に対する反論の意味をなしていない。我々は、世界の現実に立脚し、日本の国益を再定義して、あるべき防衛戦略を合意すべき時期を迎えている。

米中という二つの大国のはざまで生きるミドル・パワーである日本を考えたとき、中国に一方的な現状変更をされないよう拒否する力を持つと同時に、米国の余分な戦争に加担して力を浪費することがないようにしなければならない。

それこそ、21世紀に生きる「専守防衛」の戦略である。私が代表を務める「自衛隊を活かす会」(略称)が、今回、『新・自衛隊論』(講談社現代新書)を刊行した意味はそこにある。

読書人の雑誌『本』2015年7月号より

自衛隊を活かす会
自衛隊を否定するのでもなく、かといって集団的自衛権や国防軍に走るのでもなく、現行憲法の下で誕生した自衛隊の可能性を探り、2014年6月7日に発足した任意団体。正式名称は「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」。代表は柳澤協二(元内閣官房副長官補・防衛庁運用局長)、呼びかけ人を伊勢崎賢治(東京外国語大学教授)と加藤朗(桜美林大学教授)が務めている。本書にはその他、冨澤暉(元陸上幕僚長)、植木千可子(早稲田大学大学院教授)、小原凡司(東京財団研究員)、宮坂直史(防衛大学校教授)、酒井啓子(千葉大学教授)、渡邊隆(元陸将)、林吉永(元空将補)、山本洋(元陸将)の各氏がそれぞれの専門分野から論考を寄稿している。

自衛隊を活かす会・編/著
『新・自衛隊論』
講談社現代新書 税別価格:900円

11人の専門家・研究者が分析・解説する自衛隊の「限界」と「可能性」。集団的自衛権、新たな安保法制を考えるための必読書。

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