米国を守れば「抑止力」が高まるなんてあり得ない!

米中のはざまで生きる日本のあるべき防衛戦略とは?
柳澤 協二

米中の「新たな大国関係」

抑止力には2つのタイプがある。

典型的には、「相手が攻めてきたら倍返しにしてやる」という、報復あるいは懲罰の論理によるものだ。冷戦期には、米ソの間で、最後は核の応酬となって相互に滅んでしまうという恐怖が、戦争を抑止していると考えられていた。

もう1つのタイプは、相手がたとえ島を取りに来たとしても、成果に見合わない相当な損害を与えることによって容易には目的を達成させない抵抗力を持つことだ。これを、拒否力または拒否的抑止力という。

冷戦期の日本は、米ソの間で核の応酬に至る全面戦争が抑止される環境の中で、核を使うに至らない小規模の侵略に対して持ちこたえるに足りる「基盤的防衛力」を持ち、個別的自衛権による抵抗を行う「拒否力」としての防衛力を維持してきた。

それは、米軍の軍事拠点である日本列島を守ることによって、ソ連の太平洋への進出を阻むアメリカの世界戦略を補完するものでもあった。

今日、国際情勢は大きく変わった。ソ連が崩壊して世界は「自由主義経済」という共通のシステムに組み込まれることになった。米中は、相互に経済的に深く依存しながら、アジアにおける軍事的覇権を争っている。

米国にとって、中国の台頭は経済的チャンスであるとともに、米国主導の国際秩序に対する挑戦でもある。

中国にとっても、米国と米国主導の国際秩序の存在は、自国の経済発展の前提であるとともに、軍事的な封じ込めによって自らの価値観を危うくする強権的覇権国でもある。