年収も学歴もモテも全部フツー
目立たないけど数が多い「ハンパくん」はどうすればいいの?

二村ヒトシ×川崎貴子@新宿・ゴールデン街(第1回)
二村 ヒトシ, 川崎 貴子 プロフィール

二村 この「普通のOLさん」って、今はいないですよね?

コンサルH はい。絶滅しかかってますね。もっと年収が下がってしまって、ダブルワークなどをしている派遣さんや、さらに仕事をがんばって500万以上稼ぐバリバリした独身女性、通称「負け犬ちゃん」など、多様化していきました。

川崎 このハンパくんたちは、どういう女性が好きなんでしょう? いろいろハンパだとは言いましたけど、年収500万前後は共働き相手として、非常に推奨銘柄なんです。なんとかして掘り起こしたい層ですよ。

二村 そりゃあまあ……、顔が好みで、自分を立ててくれて、結婚したら共働きもいとわないけど家事もしっかりやってくれる女の人じゃない?

川崎 空から理想の女の子が降ってくるのを待ってるタイプですか……(本連載 第3回参照

ハンパくんのなかには、セカンド中年童貞が多く潜んでいる

コンサルH この負け犬ちゃんの不幸って、社会的にも認知されているし、本人も「これじゃダメだよね」って自覚してるんです。そもそも酒井順子さんが『負け犬の遠吠え』で自ら分析し、「負け犬」というネーミングまでされているわけですから。さらに今は、『東京タラレバ娘』というマンガで、33歳、おそらく年収は500万以上ある一見イケてる女子の抱える葛藤がリアルに描かれてますね。

川崎 ふむ、女性のうっすら不幸な人は、キャラクターになるんですね。

コンサルH そうなんです。一方男は、「楽しいフリーター」、つまり貧困層はキャラクターになります。映像にもなった『アフロ田中』や『THE3名様』。あと、貧困と犯罪を描いた『ギャングース』などのマンガはあります。でも、ハンパくんを扱った作品というのは、今のところ思いつきません。

二村 僕は、これまでAV監督として、AVを製作する側の人にしかほとんど会ってこなかったんです。僕のつくったAVを多く消費してくれているであろう「普通のサラリーマン」と接触したことがなかった。でも最近は、AVメーカーの社長のはしくれとして、コンテンツ流通の営業さんとかと会うようになった。そうしたらねえ、なんというか、彼らは本当に普通なんだよね。すっごい普通のサラリーマン。まじめであり、ツッコミどころがない。たしかに彼らはキャラが立ってないから、マスコミも取り上げないし、マンガや小説にもなりにくいんだろうなあ。

コンサルH サラリーマンというのは、良い観点ですね。ハンパくんは、いわゆる日本の「サラリーマン」なんですよ。日本経済を支える大多数のサラリーマンがハンパくんなんです。だからこそ、彼らを救えれば、日本全体が元気になるはずです。そしてかつては、サラリーマン漫画というジャンルで作品がたくさんあったんです。東海林さだおの『アサッテ君』に、はらたいらの『ゲンペーくん』、サトウサンペイの『フジ三太郎』……

二村 あー! あったあった。園山俊二の『花の係長』とかね。同じ作者の『はじめ人間ギャートルズ』の原始人のキャラが、そのまま昭和のサラリーマンになったみたいな。

川崎 そういうマンガを、当時のサラリーマンは共感して読んでたんですか?

コンサルH サラリーマン漫画全盛のときは、高度成長時代で、将来のお金の不安もないし、ダメサラリーマンでも楽しく生きられたんですよ。そういう漫画がなくなっていく過渡期に現れたのが、『島耕作』シリーズです。島耕作はぜんぜんハンパくんじゃないですよね。

二村 エリートだし、モテるヤリチンだしね。じつはさ、現代の漫画には主人公として登場しないハンパくん層には、中年童貞が多いと思う。

川崎 えっ! 中年童貞って、貧困層の話かと思っていました。

二村 ルポ 中年童貞』で描かれている中には貧困層の人もいるけど、じつはハンパくん層にも多い。それは、完全な童貞じゃなくて、セカンド童貞ということ。風俗には行ったことがあったり、学生時代は付き合ってたこともあったりするんだけど、働き始めて恋愛から縁遠くなり、そのまま、かれこれ10年くらいセックスをしていないという男の人、少なくないと思うなあ。

コンサルH それ、当たってますね。しかも、彼らは風俗もあまり好きじゃないんですよ。

二村 あー、そうかも。セックスそのものが、そこまで好きじゃないんだよね。セックス好きな人って、もっと行動するから。

コンサルH ロマンティック・ラブに憧れてる人が多いんです。それがまた、彼らを不幸にしているんですよね。

次回に続く。