精神科病院准看護師が
患者の頭を踏みつけ、首の骨を折る
異常虐待の闇が明るみに!【前篇】

佐藤光展(読売新聞医療部 記者), 講談社現代新書

服薬3日目。父親と散歩中、上半身がけいれんしてエビのように大きく曲がり、苦しみ出した。呼吸が困難になり、唇が紫色になった。救急車でI病院に運ばれ、薬の血中濃度を下げる点滴が行われた。
 
この入院中も統合失調症の診断は変わらなかった。薬は古くからある抗精神病薬プロピタンに変更され、不随意運動を抑える目的で抗パーキンソン病薬アキネトンが追加された。だが、意味不明のことを話し出すなど状態は悪化し、別の抗精神病薬や抗不安薬などが追加されていった。
 
入院1ヵ月半、首の筋肉が硬直して前方に曲がり始めた。入院半年、斜頸(しゃけい)が進んであごが鎖骨のあたりについたままになった。斜頸の治療のため大学病院に転院したが、筋肉の緊張を和らげるボトックス(A型ボツリヌス毒素製剤)注射を首に打っても状態は改善しなかった。
 
この大学病院でも精神科を受診した。統合失調症の診断は変わらず、服薬を続けるうちに歩行困難や意識障害が現れてきた。精神科医から電気けいれん療法を勧められ、1クール(6回)受けたが効果はなかった。そればかりか「電気ショックを境にかえって精神状態が悪化した」と父親は語る。2クール目を勧める精神科医に不信感を募らせた家族は、再び転院を決めた。

統合失調症から発達障害へ

「統合失調症ではなく発達障害の可能性がある」

誤診を指摘したのは、皮肉にもユウキさんが後に重傷を負うことになる転院先のA病院の医師だった。ユウキさんはごく少量の薬にも過敏に反応し、重い副作用が出やすい体質だったのだ。以後、薬は処方されなくなり、外来通院で様子をみることになったものの、ユウキさんの認知能力はすでにひどく低下していた。
 
先にもふれたが、知的障害はないのに相手の胸の内を読むことが苦手な発達障害の人は、孤立したりいじめの対象になったりして、不登校や引きこもりに陥りやすい。周囲の無理解や不適切な対応が続くと、抑うつ状態や恐怖場面のフラッシュバックなど、二次障害が引き起こされることがある。