精神科病院准看護師が
患者の頭を踏みつけ、首の骨を折る
異常虐待の闇が明るみに!【前篇】

佐藤光展(読売新聞医療部 記者), 講談社現代新書

ユウキさんの行動について、東京の西部にある精神科病院の薬剤師は指摘する。

「賦活症候群(アクチベーション・シンドローム)の可能性が考えられます。パキシルは確かに高い抗うつ効果があってよいのですが、代わりに衝動性が高まる賦活症候群のような副作用が起こり得ます。『パキシルは効くから』と安易に処方する医師が多いのですが、他のSSRIとは違った薬物動態であることを知るべきです。

薬は通常、飲むと血液中の成分の濃度が上がっていきます。これは『線形モデル』と言って、薬の量と濃度が比例関係になります。ですが、パキシルは『非線形モデル』のため比例関係ではありません。薬を少し増やしただけでも、人によってはものすごい量の血中濃度になることがあるのです。すると場合によっては、脳のセロトニンを刺激して衝動性が増すと考えられます」
 
ユウキさんの暴力行為がこの副作用にあたるとは断定できないが、それまでの穏和な性格から考えると、あまりにも唐突で自滅的な行動だった。

統合失調症と誤診した主治医による薬漬け治療がスタート

見知らぬ人を殴ったユウキさんは、家族に伴われてI病院に行った。診察した精神科医はユウキさんにいくつか質問したが、幻聴や妄想が確認できないことを不思議がり、しきりに首をひねった。最後には「無関係の他人を殴るのだから統合失調症でしょうね」と結論づけた。

この精神科医の頭の中には「理由なく人を殴る行動=統合失調症」という等式ができあがっていたらしい。一般人の偏見レベルであり、無理解も甚だしいが、こうした乱暴な診断が精神科では珍しくない。

「自宅で様子を見てください」と3日分の薬が渡された。それは後日、抗精神病薬リスパダールと分かった。
 
服薬1日目。飲んで間もなく首がうなだれて意識がなくなった。母親が驚いてI病院に電話すると「水を飲ませてください」とだけ指示された。