精神科病院准看護師が
患者の頭を踏みつけ、首の骨を折る
異常虐待の闇が明るみに!【前篇】

佐藤光展(読売新聞医療部 記者), 講談社現代新書

両親が異変を察して部屋を訪れた時には、何も食べずガリガリにやせて布団に横たわった状態だった。驚いた両親は実家に連れ戻した。引きこもりの詳しい原因は不明だが、ユウキさんと電話でよく話していた姉は「恋愛や交友関係で悩みを抱えていたようです」と話す。
 
ユウキさんは実家で次第に元気を取り戻した。運動をしたり、図書館に通ったり、飲食店でバイトをしたりした。まもなく通学も再開したが、両親の心配は消えず、片道4時間かけて実家から大学に通うことになった。

この遠距離通学が再び精神的消耗につながったのか、3年の夏、家族に相談もなしに退学届けを出した。その直後から抑うつ状態が顕著になった。「一日中ボーッとして魂の抜け殻のようでした」と母親は振り返る。

抗うつ薬の服用で運命が暗転

近くのI精神科病院(以下、I病院と表記)を受診し、抗うつ薬パキシル(神経伝達物質セロトニンの再吸収を阻害してセロトニンを増やす抗うつ薬SSRIの一種)が処方された。飲み始めて2ヵ月、向かいの家の引越し作業をしていた運送会社の男性をいきなり殴って軽傷を負わせた。ユウキさんは自分で通報し、警察に行った。調べを終えて実家に戻る途中、両親に「寂しかったんだ」と漏らした。
 
ユウキさんが飲んでいたパキシルは、衝動性を亢進(こうしん)する副作用が報告されている。特に若い人が服用する場合は要注意とされる。添付文書の一部(「重要な基本的注意」の一部)を抜き出してみよう。
 
不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性(いしげきせい)、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏、軽躁、躁病等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。