映画スターウォーズに登場するような、夢の「ホバー・バイク(宙を飛ぶバイク)」が実用化されるかもしれない。このほど英国のベンチャー企業と米国防総省がホバー・バイクを共同開発する契約を結んだという。
●"U.S. Defense Department to develop UK hoverbike" REUTERS, Jun 22, 2015
同契約が交わされる前から、ホバー・バイクの開発に着手していたのは、英Malloy Aeronautics社と米国の軍需メーカーSURVICE Engineering社。両社はすでにクラウドファンディングのKickstarterで資金を調達してプロトタイプを開発、それが空中を移動する様子をユーチューブに公開している。
この動画を見ると、このホバー・バイクはもともと、マルチ・ローター型のドローンを改造して、そこに人を乗せるというアイディアに基づいているようだ(プロトタイプには人形が乗っていたが、これを大型化すれば人間も乗ることができるらしい)。
もっともドローンのように上空を飛べば、落下したときに搭乗者が死ぬ恐れがあるが、地上すれすれをバイクのように移動する分には、その危険性が少ない。たとえエンジン・トラブルなどが発生した場合でも、路上に停まればすむからだ。同マシンはまた、多目的に設計されており、人が乗らないときにはドローンに早変わりして、荷物の運搬などにも使えるという。
国防総省、つまり米軍はこうしたホバー・バイクを、テロリストが潜む山岳地帯などで兵士の移動用に使いたいとしている。たとえば足場が悪く窮屈な岩陰のような場所でも、ホバー・バイクなら器用に移動できるというわけだ。またドローンとして使う場合には、戦地での偵察用や前線への物資の補給などに使うことを想定しているという。
一方、開発元のMalloy Aeronauticsの方では、当初は軍用に開発するが、いずれは一般消費者に向けた製品化を目指しているという。
楽しみな話だが、ちょっと気になるのは「本当に出来るのか?」という点だ。確かに原理的には可能かもしれないが、問題は開発資金だ。Malloy Aeronautics社らがプロトタイプを開発するまでに、Kickstarterで調達したお金は約10万ドル(1,200万円余り)。さらに今後、実用化に向けて約110万ドル(1億3,000万円余り)の追加資金を調達したいとしている(http://www.hover-bike.com/MA/the-hoverbike/specifications-faq/)。
国防総省がどこまで資金援助をするかは不明だ。彼らはこれまで傘下の研究機関であるDARPA(国防高等研究計画局)を通じて、自動運転車やドローン、最近では原発の事故現場で復旧解体作業に当たる次世代ロボットなどの開発を進めてきた。それらに比べれば、今回のホバー・バイクは彼らにとって比較的小さなプロジェクトかもしれない。が、以上のような未来世界の設計図を描くのが、決まって米軍という事実には一抹の不安を禁じえない。
著者: 小林雅一
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