スティーブ・モリヤマ 第4回
「私の夢は、"この世のものとは思えない青"を自分の目で確かめることです」

島地 勝彦 プロフィール

ヒノ 具体的にはどうなるんでしょうか?

モリヤマ 「もう人生も後半戦か・・・。本当に俺の人生はこんなものでいいのだろうか?」と自問自答し始めると、ある日突然、遠い昔に感じたトキメキや夢が蘇ってきます。大型バイク、スポーツカー、サーフィン、トライアスロン、退職と起業、若い愛人との失楽園ごっこ・・・。葛藤と無謀のシーソーゲームです。

こうして、"ミッドライフ・クライシス"という名の人生の一幕が開けていきます。だいたい40代半ば以降の人に、そういう変化が起こることが多いようです。

シマジ ストリックランドだな。

モリヤマ なるほど。『月と六ペンス』にでてくる、ゴーギャンをモデルにした主人公の名前ですね。優秀だった証券マンが、40歳を過ぎて突然会社を辞め、奥さんと子供を捨てて画家になるんでしたよね。ミッドライフ・クライシスに陥った中年男の典型的な行動パターンじゃないですか。シマジ先生は、40代半ばから50代前半にかけてなにをなさってましたか?

シマジ 41歳で『週刊プレイボーイ』の編集長になり、多忙を極めながら4年半くらいやって、そのあと『PLAYBOY』の編集長をやり、あるとき上司連中にカチンときて辞表を書いたが受理されず、しばしの閉門蟄居を経て返り咲き、『Bart』の創刊編集長をやり、51歳で役員待遇になり、浪費の限りを尽くしながら広告部を仕切っていました。

ヒノ つまり、シマジさんが辞表を書いたあたりがスティーブさんのいうミッドライフ・クライシスの時期に当たるわけですね。

モリヤマ ヒノさん、流石です。順風満帆でブイブイいわせていたシマジ先生が突然辞表を書かれたというのは、"思秋期の危機"の臭いがプンプンしますよね。シマジ先生の師である開高先生も例外ではなく、『オーパ、オーパ!!』にこんなくだりがあります。

「6年前、45歳までは毎晩のようにバーからバーへ渡り歩いていたが、それ以降は、新宿も銀座も1年くらいかかってツケを一文残らず返済し、全戦線から撤退した。小説家仲間とゴルフもせず、麻雀もせず、会合にも顔を出さず、パーティーにも出ない。ないないづくしだ」

立木 開高さんは特別な人だから自分の内面の変化に敏感だったのかもしれないね。

モリヤマ 知り合いのヨーロッパ人の中にも、真面目一徹だった人が、突然会社を辞めて起業したり、離婚して若い子と再婚したり、急にハーレーを買ったり・・・。そんな話を毎年ちらほら耳にします。

シマジ へえ、ハーレー・ダビッドソンの売り上げには男の思秋期との相関関係があったのか。それは面白いねえ。

モリヤマ ハーレーとは何なのかといいますと、ズバリ『老人と海』のカジキマグロです。あるいは開高先生の『オーパ!』に出てくる幻の古代魚ピラルクーといってもいいでしょう。結局のところ、人間はアニマルです。オスであれ、メスであれ、人生の要所要所で、大型バイクや巨大魚に象徴される圧倒的な力、エネルギーの補給を本能的に必要とする生き物なんじゃないでしょうか。

パワーに対する畏敬、憧憬、渇望、そういう気持ちが体の奥底から湧き上がってくるのを少しでも感じたら、そっと耳を傾けてみる。人それぞれ異なる力の発信源に身を委ねてみる。そういうのって、大切じゃないかなとも思うんですよ。