スティーブ・モリヤマ 第4回
「私の夢は、"この世のものとは思えない青"を自分の目で確かめることです」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ "この世のものとは思えない青"というのは気になるね。

モリヤマ まだ見たことがないのですが、それを見たという友人が「絶対に見るべきだ」というんです。きっと言葉では表現できない神聖な色なのでしょう。それをこの目で確かめることで、肉体が朽ちていく寸前の美の本質をつかめる気がしております。

シマジ キューバには何度も行ったけど、わたしはもっぱら葉巻三昧で、ビッグゲーム・フィッシングどころじゃなかったな。

モリヤマ オーパ!(ブラジル・ポルトガル語の感嘆表現) シマジ先生もキューバ通だったのですね。そういえば、ヘミングウェイの『老人と海』で、悪戦苦闘の末に仕留めたカジキマグロが、帰港する途中で鮫の大群に襲撃されて骨と皮だけにされてしまうシーンがありますよね。ところが、港でその残骸をたまたま目にした観光客が、そこにある種の「美」を見出します。美醜は表裏一体です。

数年前、タヒチの離島であの本を読み返しながら「ここでいう"美しさ"は、一体どこから来るんだろう?」って考えていたら、突然「思秋期の危機」という言葉を思いついたんです。

シマジ 「思秋期」っていうのは面白い表現だね。40代から50代にかけて起きる男の更年期障害みたいなものですか。

モリヤマ 男性更年期障害は「アンドロポーズ」といって、"思秋期の危機"の原因の一つかもしれませんが、まったく同じではありません。英語圏で、4,50代の男たちと飲むと、よく"ミッドライフ・クライシス"の話で盛り上がります。

それをわたしが勝手に「思秋期の危機」と訳しているんですが、特にイギリスでは「自分を笑い飛ばせることは粋」と考えられてまして、自嘲的な武勇伝に花が咲くんです。突然襲ってくる気力、体力の衰え。もの忘れ。老眼。脳味噌や上半身に加えて下半身も衰え始める。めっきり酒も弱くなります。シマジ先生はそういう経験ありませんでしたか?

シマジ うーん、そういうのはまったく感じたことないなあ。

立木 おれはシマジを34歳からずっと定点観察しているけど、こいつに関してその"思秋期"とやらはなかったね。断言できる。

モリヤマ 人生に思春期があれば、"思秋期"があっても不思議ではありませんよね。もちろん、先生がたみたいに、若さとの別れの予感を感じつつも、うまくソフトランディングできる人はいらっしゃいますが、大多数は、焦燥感と喪失感に彩られたアリ地獄のような精神風景のなかで、"パワー"の発信源を求めて、さすらいのノマドとなります。