【沿線革命047】
鉄道の首都直下地震への備えをさらに考える

阿部 等

レールブレーキを本気で導入しよう

さる6月18日に、レール・車輪接触力学研究会の総会・講演会が開催された。自由討議にて、私は以下を問題提起した。
・今のまま首都直下地震に襲われたら脱線・転覆事故が同時多発しかねない
・被害軽減には粘着力に頼らないレールブレーキの導入が有効
・かつてレールブレーキの導入を検討した際、地上設備への影響を理由に断念した
・地上設備と車両の関係者が会する本会で研究できないか

その前の運輸安全委員会の松本陽委員による講演会にて、2014(平成26)年2月15日の東急東横線の元住吉構内での列車衝突事故の調査報告書(http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1852)に、緊急時のブレーキとしてレールブレーキへの言及がある(上記35ページ)とのお話があった。

私の問題提起に対し、「総合的な視点で鉄道の安全性やサービスを高める視点が欠かせない」との指摘もあり、前向きな議論となった。

会の終了後、何名かの線路と車両運動の専門家の方と意見交換したところ、「海外のLRTではレールブレーキは標準装備」「鉄道でも装備している車両が多い」といったお話を伺った。

一方、日本では急制動による車内転倒に対する事業者への責任追及が厳しく、「バス会社は、他車が飛び出してきて接触しそうでも、車内の旅客が転倒しないよう急ブレーキを掛けない指導となっている」との指摘もあった。

レールブレーキにより鉄道が強いブレーキ力を持てることは、技術的には明確であり、コストも膨大に掛かるわけではない。行政が導入を禁じているわけでもない。

鉄道事業者が、地上設備への影響を整理し、減速度を状況に応じて適正化し、お客様へ丁寧に説明すれば、導入できるのだ。

地上設備部門にとって、不用意な線路内進入による触車、確認誤りによる終列車通過前の作業着手、線路閉鎖解除時の確認漏れによる線路上への物置き忘れは、19世紀の鉄道開業以来の悩みの種だった。

列車の減速度を向上できれば、それらによる事故の頻度と被害度を大幅に軽減できる。レールブレーキを導入できる条件を整理すれば、自分達の悩みを緩和できるのだ。また、踏切事故やホーム転落事故の頻度と被害度も大幅に軽減できる。

安全面とともに、サービス改善にも役立つ。減速度を向上できれば、安全に車間距離を詰められ、時隔を短縮して輸送力を増強でき混雑を緩和できる。常用ブレーキも向上させれば、所要時間の短縮にもなる。

首都直下地震も含め大地震の恐ろしい影が忍び寄る中、レールブレーキを本気で導入したいものだ。