イギリスは本当にEUを離脱するのか? 
アメリカとの不協和音からスコットランド独立の動きまで
「ふしぎな国」の謎を読み解く!

笠原 敏彦 プロフィール

スコットランド独立機運の盛り上がりに関しては、2つの要因が絡み合い、そのエネルギーが最大化した結果だと説明できます。

まずは、歴史を通して一貫して流れる民族の情念という通奏低音です。これは言うまでもなく、連合王国の主体であるイングランドとは異なる独自の歴史、文化、民族性を持ち、それに対するプライドのことです。

スコットランドは福祉を重視し、社会民主主義的な政治志向が強い地域であり、このエネルギーは、ロンドンに保守党政権(キャメロン政権)があるときに高まります。

しかし、それだけでは独立機運は盛り上がりません。そのエネルギーを行動へ駆り立てる触媒が必要です。それが、地域政党・スコットランド民族党(SNP)を率いたレックス・サモンド党首(住民投票後に辞任)というカリスマ的なリーダーでした。

サモンド氏は2011年の自治議会選挙で「スコットランド沖の北海油田からの収入を財源とすれば、独立スコットランドはノルウェーのように豊かな国家になれる」などと訴え、過半数の議席を獲得しました。「独立を問う住民投票の実施」を選挙公約に掲げていたため、キャメロン首相も住民投票の実施を容認せざるを得なかったのです。独立を問う住民投票をあっさりと認めてしまう辺りが、イギリスの民主主義の凄いところなのかもしれません。

なぜスコットランド独立は回避されたか

Q:直前の世論調査では、スコットランド独立支持が優勢な場面もありましたが、蓋を開けてみると、独立反対派が賛成派を上回りました。スコットランド独立が最終段階で回避された理由は、どこにあるかお考えですか?

笠原:経済の将来性への不安だと思います。住民が最も関心を払ったのは、「独立したら本当に今より豊かになれるのか」ということでした。

独立騒動というと、民族主義、ナショナリズムの高まりなどをイメージしがちですが、焦点は「独立は経済的に損か得か」のそろばん勘定だったと言えます。実を言うと、スコットランドが1707年にイングランドと合同した理由も、経済的な疲弊から脱出するとことでした。

今回の住民投票で、多数派の住民が独立に反対した理由では、SNPが独立後もイギリス通貨ポンドを使うと主張し、ロンドンの中央政府がそれを認めない姿勢を示したことで、住民がスコットランド経済の将来性に不安をもったことが大きかったようです。