僕は息子が生まれてこのかた、いつも息子の発信に身を寄せて来た。話しかけられれば仕事の手をとめてしっかり聞いた。
世の中には理不尽なことが多い。訴えても聞き入れてくれなかったり、誤解されたままで過ぎてしまうことも多い。でもウチに帰ればパパ(ママ)なら絶対話を聞いてくれる、というのが大きな安心感をつくるのだと思う。
決して孤独にならない。それが情緒の安定剤となるのだろう。つまり家族というのは子どもにとって、最後の砦でなければならないのだと思う。あ、それは大人にとっても同じだ。やはり、自分の家族、家庭がなにより世界一なんだ。「おうちがイチバン、おうちがダイジ!」なのだ。
そんなエッセイのように思うことを綴った『東儀家の子育て 才能があふれ出す35の理由』という子育て本を出した。子育てまっただ中だから「うまく育て上げました」という結果はない。だからこれが本当にいい子育てなのかという保証もない。
でも、今だからこそ感じることをそのまま綴ることで、今子育てをしている人たちに、なにかしらのヒントを提供できるかもしれないと思う。
子どもの自由な発想を楽しめる時期は今しかない。大人になったら今のような言動は頼んだってやってくれない。この愛おしい瞬間をどうして放っておけるものか。
「パパは君のような子どもと向き合うことができて本当に幸せだ」。
そんな感触をいつまでもあたためて持ち続けたい。でも大人になるにつれ、そうもいかなくなるだろう。だからこそ、自分のちょっとセンチメンタルなロマンも文字にして残してみたくなったのだ。世界一の息子に捧げて。
(とうぎ・ひでき 雅楽師)
読書人の雑誌『本』2015年7月号より
東儀秀樹・著
『東儀家の子育て 才能があふれ出す35の理由』
講談社 税別価格:1,300円
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