アイスコーヒーに洗浄機付き便座にママチャリ?
外国人の目にはこんな意外なものが「クール」に映っていた

インタビュー「書いたのは私です」鴻上尚史
週刊現代 プロフィール

―「日本人しかしない行動」も想像以上に多いようですね。父親と幼い娘が一緒に入浴するのは日本だけ、という指摘もありました。

ええ。「親子が一緒に寝る」習慣はアジアで見られるんだけど、「父と娘の入浴」は世界中どの国にもビックリされた。日本だけ。麺類を「すする」のもそうなんです。番組で実験してみたんですが、西洋人はもちろん、中国や韓国、ベトナム、インドネシアなど、麺類を食べるアジアの人たちも全員すすりませんでした。本当に「日本人しかしない」ことがある。そういうものに出会うと不思議だし、興味が湧きますね。

―日本人には「社会」の他に「世間」がある、という鴻上さんの考察は興味深かったです。

世間とは学校や会社、近所など、自分と接点のある人たちの集団です。世間の中の人にはとても親切なのに、外にいる人には冷たく、関心を持たない。一方、欧米には世間がなくて社会しかない。だから、知らない人にも気軽に話しかけるし、困っている人を見れば手を貸すわけですね。

ただ、世間が日本特有のものとは言えません。ヨーロッパでもキリスト教が普及する前は世間が存在していたそうです。だから人間の心性としては世間的な繋がりを重視するほうが普通で、むしろ一神教によって欧米では世間がなくなったと考えたほうがいい。

日本は島国だから排他的だ、という考え方があるでしょう。だから世間が生まれたん、と考えたくなりますけど、「その通例の判断でいいの?」と。日本が海外と違う。「なぜ違うのか」と理由を考察する前に、まず「どれくらい違うのか」という現状を知ることが大切だと思うんです。安直に答えを出して安心してしまうと、何か大切なものが失われる。その答えが本当に正しいかどうかも分からないですからね。

―「日本人として誇りを持ちました」という視聴者の素朴な感想に対して、違和感を覚えることもあるそうですね。

最近、外国人が日本文化を語る番組が増えていますが、「日本は素晴らしい!」と持っていくパターンが多い。僕たちはそういう予定調和にならないように、と強く意識しています。「日本万歳!」というだけじゃなくて、欠点や問題も含めて日本なので。

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僕が伝えたいのは、日本の素晴らしさではなくて、「日本人が自慢しようとすること」と「海外の人が感動すること」はずいぶん違うんだという事実です。その違いを認めて、多様性を楽しめるようになればいいなと。

自分の国の長所や短所を楽しめるのは、余裕がある豊かな国ということです。自国に批判的な言説を一切拒否する国民しかいない国は、余裕のないギスギスした国でしょう。GDPが世界2位だった時代は悪口も笑って受け入れていたのに、最近は日本人に余裕がなくなってきた気がします。

(取材・文/伊藤和弘)

こうかみ・しょうじ/'58年愛媛県生まれ。作家・演出家。'81年に劇団「第三舞台」を結成。'95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞、'10年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞など受賞多数。著書に『ベター・ハーフ』他
 

「週刊現代」2015年6月13日号より


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