【沿線革命046】鉄道が平日朝8時に首都直下地震に襲われても被害を最小に

阿部 等

線路の大変形を少しでも減らすことが第一

100本もの列車が脱線・転覆しかねないのは、構造として最も多い有道床軌道の線路が、いまのままでは、各所で阪神・淡路大震災の時のように大変形するかもしれないからだ。

れれ大きく変形したJR西日本神戸線の摂津本山付近の線路((株)交通新聞社提供)

大変形した線路に一定速度以上の列車が進入したら、脱線は避けがたい。鉄道に関わる被害を減らすには、線路が大変形する箇所数や度合いを少しでも減らすことが第一だ。

道床安定剤を散布して道床を緩ませない

有道床軌道は、砕石が列車の荷重や速度による衝撃を緩和するクッション役となっている。また、変位が許容限度を超える前に、MTT(マルタイと称し、多数の爪のようなものを持つ保守用車両で、砕石をまくらぎの下に押し込むと同時に突き固める)作業により軌道整備しやすい。

言ってみれば、“柔らかい”ことがメリットなのだが、大地震に対してはそれが仇となる。コンクリートやアスファルトで固めては、メリットを失ってしまう。

提案の第一として、大地震時の線路の大変形を少しでも減らす経済的な方策として、道床安定剤(道床固結剤、バラスト弾性固着剤とも言う)の散布を提案する。道床安定剤は軌道を完全には固めず、MTT作業をすると砕石をばらけさす。

ロングレールが夏場に高温となり伸びようとする力が、道床とまくらぎで抑える力を上回ると、張り出しと称する線路の大変形を発生させる。大地震時のものと同様だ。線路保守のレベルアップとともにほとんど起きなくなったが、国鉄の末期には全国で頻発した。

道床安定剤はロングレールの張り出し防止策として活用されている。それを地震時の大変形防止にも活用する。大変形を根絶はできないにしろ、箇所数や度合いをだいぶ減らせるはずだ。

東京圏にある有道床軌道は、地平・高架・地下を併せて単線延長5,000km近くだろう。道床安定剤を散布する経費が、作業員労務費・材料費・散布機械損料等を併せて1m当たり仮に1,000円とする。

1km当たり100万円、5,000kmで50億円、平均2年に1回散布するとして、25億円/年。それにより救える命を考えたら、即刻実行すべき十分に安い金額だ。

新潟県中越地震での新幹線脱線の原因

2004(平成16)年10月の新潟県中越地震にて新幹線が脱線したものの大惨事には至らず、「さすが新幹線は安全」との評価が高まった。

しかし、冷静に見るなら、脱線した後、速度が低下するまでの間に対向列車も曲線も分岐器もホームもなく、運が良かったに過ぎない。地震が発生してから停止まで1.5km以上も走行していたのだ。

たまたまの幸運に気付かず次への備えを怠ると、とんでもないしっぺ返しを受けかねない。

事故後、航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)が様々な調査・解析を重ね、2007(平成19)年11月に報告書を公表(http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail.php?id=1663)した。

地震動による脱線のメカニズムは報告書27ページに記載されており、噛み砕いてまとめると以下のようになる。

「輪軸が大きく上下左右に振動し、片側の車輪が浮き上がり、輪軸が横方向に移動し、下降した車輪のフランジがレール上に乗り、レールから外れるロッキング脱線の可能性が考えられる。」

正直、解せない。片側の車輪のみが浮き上がるほど、左右不均等の上下動をしたとは想像しにくい。