スティーブ・モリヤマ 第2回
「自分にとってなにがベストなのか・・・"ストリート・スマート"な人間は常にそれを考えて行動します」

島地 勝彦 プロフィール

ヒノ そんな塾があるとはわたしも知りませんでしたが、スティーブさんの本が大学生の卒論に使われるという話は凄いですね。シマジさんはもう15冊も出していますけど、卒論に使いたいなんて手紙をもらったことはありますか?

立木 それはありえない。そもそもシマジが書いているのは学問とは正反対のことばかりだろう。百害あって一利なしじゃないの。

シマジ でもうちの書生が開高健をテーマにした卒論を書くそうだ。もしかするとわたしの著作からも引用するかもしれないよ。

立木 うちの書生って何だ?

ヒノ 毎週末、伊勢丹のバーに通ってシマジさんにへばりついている早稲田の学生のことです。あ、そうか、6月11日に蘇生版が出る開高さんとのジョーク十番勝負『水の上を歩く?』から引用すると期待しているんですね。

シマジ まあ、そんなところだ。ヒノ、お前がヘンなことを言い出すから話が大きく脱線したじゃないか。スティーブ、なんの話だったっけ?

モリヤマ はい、就活塾の話でした。

シマジ そうそう、就活塾だよ。でも、同じ塾に通った学生が面接で何人も同じように応答したら、面接官はどう思うんだろうね。

モリヤマ 金太郎飴的な受け答えが多くて、うんざりしている、という話を人事担当の知り合いから聞いたことがあります。

シマジ だろうね。わたしは出版業界のことしか知らないけど、最近は個性的な若い編集者がいなくなったね。あれは採用システムに問題があるんじゃないかな。たった5分の面接を5回ほどやったぐらいで学生の運命を決めるというのも、どうかと思うね。

モリヤマ 就活塾のマニュアル通りに演技をして、仮に入社できたとしても、その後の仕事でどこまで頑張れるんでしょうか。人間は鵜ではないんです。鵜呑みは危険です。人生も仕事も、平時にはマニュアルが通用することもありますが、有事においては役立ちません。

シマジ なるほど、それはよくわかります。

モリヤマ 有事において輝けるのは、一言でいえば"ストリート・スマート"な人です。直訳していうならば、「地頭が良くて、生命力があって、喧嘩が強い人」のことです。街でなにか想定外のことが起きたときにも、瞬時に自分の置かれた状況を判断し、うまく立ち振る舞える人、闘える人のことです。

ヒノ つまり処世術に長けた人のことでしょうか?

モリヤマ "処世術"というと、なにか小賢しいニュアンスが見え隠れしますが、もう少しポジティブな意味合いでしょうね。「自分が本当に好きなことは何か」を熟知していて、「問題はどこにあるのか」を自分のアタマで考えられる人。

みんなが問題と思っていることの多くは、実はたいした問題じゃないんです。それはたいてい「現象」にすぎなくて、たくさんの現象のなかに「問題」は息をひそめて隠れています。ストリート・スマートな人間は、不敵な笑いを浮かべながら、確実に問題に辿り着いて、解決する力をもっています。