「・・・・・・それには仔細があります。昨日も彰義隊から鉄砲を買いに来ました。また品物がござりませぬといってお断りいたしました。それはなぜかというに、これまで彰義隊には鉄砲をたびたび納めましたが、いまだに代金を一文もくださりませぬ。横浜へ行って西洋人から鉄砲を買いまするときは、現金引換えでござります。それなのに金をくれないということでは商売になりませぬ。官軍は現金で買ってくれますから、商売をいたしますまでのことであります。・・・・・・」(『大倉喜八郎の豪快なる生涯』砂川幸雄)
堂々とした発言に、彰義隊が「なるほど言うところに道理がある」と納得し、喜八郎は命が助かったうえに、その場で三百挺の鉄砲の現金取引を成立させたのである。
喜八郎自身が折に触れて周囲に語っていた有名なエピソードだが、息子の大倉雄二は眉唾だと言っている。
真偽はともかく、こうしたエピソードを信じさせてしまう力が喜八郎にはあった。
「商人にとっては儲けが命だ」という商人魂を貫いた喜八郎の成金人生は始まったばかりであった。
『週刊現代』2015年6月13日号より
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