【沿線革命045】 平日朝8時に首都直下地震に襲われたら鉄道はどうなる?

死者117名の関東大震災の時代とは鉄道への依存度が大きく異なる

冒頭写真に示したように、相模湾の震源近くの早川・小田原地区の線路は信じがたい大損壊を受け、脱線転覆事故もあった。国鉄の列車脱線は23本で、死者117名だった(土木学会編『大正12年関東大地震震害調査報告書』より)。

しかし、関東大震災の死者・行方不明者10万人以上と比べたらわずかであり、なんら社会問題にならなかった。

関東大震災後、大規模火災被害を受けた城東地区を中心に郊外移転が進み、また、地方からの上京者の住まいは郊外が中心となった。その郊外開発を支えたのが鉄道である。

首都圏の各民鉄のほとんどの路線は、関東大震災後に急速に建設が進み、戦後の人口急増期には、国鉄の各路線とともに輸送力増強が重ねられた。

その間、短期的には幸運なことに、地震の静寂期が続いた。長期的には不幸なこととならないことを願い、この記事を書いている。

関東大震災時と現代社会では、首都圏の鉄道のネットワーク密度・列車本数・走行速度・利用人員とも桁違いだ。

首都圏の人口3,000万人は人類史上最大であり、しかも平和で豊かに暮らせている。それを支えているのは鉄道ネットワークであり、複線の路線長2,500km、利用者1日4,000万人も人類史上最大である。

過去の大震災の最大死因は、関東は火災、阪神・淡路は圧死、東日本は津波だった。私は、次の大震災では鉄道の脱線・転覆になりかねないと怖くて仕方ない。

首都直下地震により鉄道の脱線・転覆事故が同時多発したら、日本の国そのものの存亡の危機となる。首都圏に住む日本社会の中枢人材を大量に失い、大震災から数週間は救命・救護・遺体処理に社会全体が忙殺され、数ヶ月から数年は効率的な交通機能を失う。

我が国は社会全体の生産性を著しく低下させ、先人たちの努力により築き上げてきた栄華を失いかねない。日本民族そのものの未来の危機だ。

鉄道各社の現行の地震対策は大事な点が漏れている

鉄道各社とも、次の大震災への備えが極めて重要なことを強く認識し、積極的な取り組みを進めている。

例えば、首都圏で最大の鉄道ネットワークを持つJR東日本は、2012(平成24)年から5年間に耐震補強対策等に3,000億円もの巨費を投じている(http://www.jreast.co.jp/earthquake_measures/)。

主な内容は、橋脚へ鉄板を巻く等して補強、駅舎等の天井や壁を補強、盛土のり面を補強、東日本大震災時に共振倒壊した高架橋上の電化柱を補強、地震観測体制を整備、非常用通信設備・電源等を整備、地震に関するルール・マニュアル等を整備といったことである。

それらの対策を見て、大事な点が2つ漏れていると指摘しよう。

1つ目は、線路の構造として最も多い地上の有道床軌道(路盤に道床・まくらぎ・レールを敷設したもの)の線路が、阪神・淡路大震災の時のような大変形を起こさない対策である。

線路の構造で最も多い地上の有道床軌道(2015年2月18日に浜松町駅にて撮影)

軌道の乗る高架橋や盛土が損壊を受けないための対策にはふんだんに経費が投じられる一方、軌道そのものが大変形を起こさない対策に、なぜか力点が置かれていない。

2つ目は、列車の減速度を向上させる対策である。鉄道事故を甚大化させる大きな要素は走行速度である。直下地震では、いくら早くにP波を検知しても効果薄であることは既に説明した。

鉄道の弱点である減速度を向上させる対策に、もっと注力すべきではないだろうか。