【沿線革命045】 平日朝8時に首都直下地震に襲われたら鉄道はどうなる?

早期地震警報システムで大惨事は防げる?

地震波は大きく分けて、速度が速く揺れが小さい縦揺れのP波と、速度が遅く揺れが大きい横揺れのS波からなる。震源が遠い場合は、P波とS波の到達に時間差が生じるので、P波を検知することにより本震であるS波の到達を事前に予知できる。

それを活用したのが早期地震警報システムで、一定規模以上のS波の進来が予測される場合は、運転士へ警報を発報し緊急停止させる。首都圏の鉄道はそれに守られ、安心かと言うと残念ながらそうではない。

鉄道の鉄車輪と鉄レールの組合わせは、自動車のゴムタイヤとアスファルト舗装の組合わせと比べ、摩擦力(鉄道業界では「粘着力」と称する)が圧倒的に小さい。

そのために、鉄道は転がり抵抗が小さく省エネかつ低環境負荷(特に100km/h以上では圧倒的)という強みを持つが、減速度が小さく緊急停止できない弱点になる。

目前の線路が破壊していても、障害物があっても、急には停まれないのだ。現行の鉄道は、緊急停止でも100km/hからで30秒、300km/hからでは2分近くを要する。

ということは、P波とS波の到達時間差の短い直下地震では、早期地震警報システムにより緊急停止指示を受けても、本震が来るまでに停まれない、あるいは十分に減速できない。

目前の線路が大きく変形していても、橋桁が落下していても、対向列車や多数の人が進入していても、停まれないのだ。また、列車そのものが上下動でバウンドしながら、地面や線路が大きく揺れる中を走り続けることになる。

首都直下地震時の最悪シナリオ

起きて欲しくないからこそ、最悪シナリオを示そう。多くの人に恐ろしさに気付いてもらい、真剣な対策が実行されることを切に願っている。

平日朝8時前後、首都圏では数百人~数千人が乗車した満員電車が数百本、数十km/hから中には100km/h以上で走行している。そこに首都直下地震が襲い、早期地震警報システムも効果を発揮できないとする。

首都圏では、こんな満員電車が数百本も同時に走行している(2015年1月27日に代々木上原駅にて撮影)

大きく変形した、しかも揺れ動く線路に高速の満員電車が各所で突っ込んでいく。その多くは脱線転覆し、隣接線へはみ出し、並行列車や対向列車との衝突も頻発しよう。地震動によりホームから大量の人が転落したところへ列車が進入といったことも起きるだろう。

仮に脱線・転覆が10本に1本で済んだとして数十箇所で同時に、2005(平成17)年4月の福知山線脱線事故(http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/images/amagasaki_jr_derail.jpg)と同等あるいはもっと悲惨な事故が起きることになる。5本に1本だと100箇所同時である。1本当りの死者・生埋め者が1000人だとすると総計10万人にもなる。

大規模停電も起きるだろうから、地下鉄の照明は非常用のわずかとなり、エスカレーターもエレベーターも動かない。非常用電源の燃料がなくなれば真っ暗となる。