「現代の日本には、ケチな感覚が蔓延している」
作家・山崎ナオコーラが放つ「可愛い社会派小説」

山崎 ナオコーラ

現代においては、決して「力を持った人と家族になりたい」なんて思うことなく、純粋に一緒に暮らしたい人と暮らし、助け合いは社会とすれば良いのではないか、と私は思う。

お金があれば、その都度、パートナーを作ることができる。仕事のパートナー、家を建てるときのパートナー、老後の計画を立てるパートナー・・・。それができないのなら、なんのためにお金というものがあるのか、なぞだ。家族間でしか助け合えないのなら、お金を流通させる必要なんてないではないか。

昔は結婚相手としかタッグを組めなかった。夫婦で仕事をし、二人で家を建て、老後はお互い、あるいは子どもに支えてもらう、それが五十年くらい前の日本だっただろう。でも、これからは違う。

私たちは今、年金を払って上の世代を支えている。べつに、自分たちの老後にそれが返ってこなくて一向に構わない。現在、この社会で生きているのだから、上の世代は働き盛りの私たちが支える、というだけの話だ。

現代の日本には、ケチな感覚が蔓延しているように思える。義援金の使い方を細かく判断しようとしたり、生活保護のルールを厳しくしろと言ったり家族同士でもっと助け合えと言ったり、冒険に出た人を助けるためにお金を使うなと言ったり、みんなケチケチしすぎている。

困っている人がいたら、助けるのが当たり前で、お金を渡したら、そのあとはもう相手のものだ。多様な生き方を肯定することなく、自分と同じような生き方をしている「自分よりかわいそうな人」のみにお金を使ってもいいと考えているのなら、それはケチだ。

確かに、現状の仕組みは、永遠に続いていくような素晴らしいものではないかもしれない。それでも、私は社会を信用している。老後も、どうにかなると思っている。

そのために今、より良い社会を作る一助になる仕事をしていきたい。

(やまざき・なおこーら 作家)
読書人の雑誌「本」2015年6月号より

山崎ナオコーラ(やまざき・なおこーら)
1978年に、福岡県に生まれる。2004年に、会社員をしながら書いた「人のセックスを笑うな」が第41回文藝賞を受賞して、デビュー

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山崎ナオコーラ・著
『可愛い世の中』
税別価格:1400円

芳香剤のメーカーで働く地味な会社員、豆子は、自身の結婚式を機に、金銭感覚が人生と共に変化していくことの面白さを発見する。決して「モテ」を追求することなく、社会人としての魅力をアップしていきたい。退職して、「香りのビジネス」を友人と起こそうと画策する。香水に、セクシーではなく、経済力という魅力を!

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