「しくしく痛む」と「きりきり痛む」はどう違う?
日本語表現の決め手になる「擬音語・擬態語」の魅力とは

山口 仲美

第二の魅力は、すぐに新しい言葉を創り出せること。普通の言葉と違ってどんどん創り出せる。擬音語・擬態語には型があるので創れるのです。最も一般的な型は「ABAB(例、ぱちぱち)」「Aッ(例、さっ)」「ABン(例、ぱたん)」など。こうした擬音語・擬態語特有の型に当てはめると、次々に新鮮な擬音語・擬態語を創ることができます。

たとえば、「クラムボンはかぷかぷわらったよ」(宮沢賢治『やまなし』)にみる笑い声「かぷかぷ」。意表をつく擬音語ですね。中原中也の「サーカス」の詩に見る「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という空中ブランコの揺れる様子を表す擬態語。萩原朔太郎の「鶏」という詩にみる鶏の声「とをてくう、とをるもう、とをるもう」という擬音語。草野心平の詩「生殖 Ⅰ」に見る蛙の交尾の時の喜びの声「るるるるるるるるるるるるるるるるるるるる」という擬音語。

いずれもこの上なく独創的ですが、すべて擬音語・擬態語特有の型をふまえて創られています。普通の言葉では、こんなふうに、次々に新しい語を創り出すことはできません。

さらに、擬音語・擬態語は、使い方を自在に変えることもできる。「いい齢をしてつまらない男にぴちゃぴちゃするから、霜枯れたことになってるとこきおろす」と幸田文の小説『流れる』に出てきます。水のはねる音を表す「ぴちゃぴちゃ」を男にいちゃつく様子に使ったのです。すると、男といちゃついている時の音まで聞こえてくるような効果がでます。ちょっと使い方を変えただけで、擬音語・擬態語は鮮烈な言葉として蘇る。普通の言葉で、使い方を変えたら? 誤用だと言われてしまいます。

こんな魅力をたたえた擬音語と擬態語をあつかった本辞典は、まず読んで楽しめます。さらに日常会話や子供を指導する時に使ってみると、効果抜群。そして、詩を始めとする韻文、童話や小説などの散文を創作する時にも応用してみると、なかなかどうして魅力的なものが出来上がります。

(やまぐち・なかみ 日本語学者・埼玉大学名誉教授)
読書人の雑誌「本」2015年6月号より

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山口仲美・編
『擬音語・擬態語辞典』
講談社学術文庫 税抜価格:1,630円

「しくしく痛む」と「きりきり痛む」はどう違う? 日本語表現の決め手となる「擬音語・擬態語」を集大成した決定版オノマトペ辞典。

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