「中西清起投手コーチなどは、藤浪を尊重してキャンプで投げる球数も本人に任せていますが、私には指導を放棄しているように映る。結局、藤浪を指導して調子を崩したら、自分の責任問題になるのを恐れているんです。
日本ハムの大谷翔平と比べて伸び悩んでいる、と見る向きもあるけど、ほとんど指導を受けず、自分で研究しながら2年連続2ケタ勝利なら、頑張っている。そんな球団体質について、あの藤浪でさえ、『頼りにならないんです』ともらしている」
それでも、球団の関西地区での人気は相変わらず。和田監督が就任した'12年以降も本拠地の平均観客動員数は、12球団で巨人につぐ2番目。豊富な資金力を外国人やFA選手の獲得にあて、補強する。そのことで、生え抜きの若手選手が育たない環境ができあがった。在阪の野球評論家が明かす。
「阪神の二軍の練習の様子を見にいったときのことです。あるコーチと話をしていると、全体練習で選手の指導を終えたコーチ陣がパソコンに向かう。聞けば、その日の練習内容を球団に報告する義務があるそうです。
本来は練習量をコントロールすることでけがを未然に防ぐのが目的でしたが、今となってはコーチが指導の『既成事実』を作るためだけの仕組みになっている。そんなダメなサラリーマンのような姿勢で、下が育つわけがない。でも今の阪神では、その作業が速やかにできる人が評価される」
両チームの対照的な姿について、評論家の江本孟紀氏はこう分析する。
「DeNAがいいのはずばり、中畑監督につきる。とにかく覚悟を決めているよ。宜野湾キャンプで話をしたとき、私には筒香と心中すること、そして『三嶋を絶対に使います』と誓った。トップがそうやってリスクを負えるか、それとも保身に走るかで、組織は全く別物になります。
和田監督は入団して以来、阪神から外に出たことがない。無意識のうちに身内で生きていく術が身についてしまった。和田監督になってから、掛布雅之や江夏豊といった往年のOBを臨時コーチとして呼んだけど、江夏はキャンプで1週間しかいなかった。それでは教えられることは限られる。関西マスコミの批判の矛先をかわす盾として球団に利用されたとしか思えない。強化、育成、補強と長期的なビジョンを持った人が出てこないと、阪神は、同じことが繰り返されるね」
汗を流し、リスクを乗り越えて育まれた強固な組織力は、カネでは買えない。年俸最下位チームの快進撃が、そのことを教えてくれている。
「週刊現代」2015年6月6日号より
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