[障がい者スポーツ]
伊藤数子「障がい者スポーツを“ツール”にして伝えたいこと」

~体験会を開催する本当の理由~
スポーツコミュニケーションズ

 知るために、実体験に勝るものはない

ハンドサイクルに試乗し、扱い方を習う

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に、パラリンピックや障がい者スポーツがメディアで取り上げられることが増え、その認知度は格段に上がってきています。しかし、一方でメディアだけに頼っていると、「特殊な人」というイメージが固定されてしまう恐れもあるのです。

 同志社大学のスポーツ健康科学部の藤田紀昭教授が行った調査によれば、障がい者スポーツをテレビやインターネットなどのメディアで観戦した人と比べて、障がい者スポーツを実際に体験したことがある人は、「障がい者のある人には特殊な能力を持っている」と思う人が少ないそうです。

 障がい者スポーツ研究の権威である藤田教授の分析はこうです。
「見るだけでは、車椅子の操作や目が見えない状態でのスポーツ活動など、『魔法使い』のように感じるかもしれない。それが実際に体験することによって、選手とはパフォーマンスレベルが違うとはいえ、技術向上に見通しが持てるのではないでしょうか」

 私たちが開催している障がい者スポーツ体験会は、障がい者スポーツを知ってもらうためよりも、スポーツというツールを使い、障がいのある人への理解を深めてもらう目的があります。障がいのある人ない人が一緒にスポーツで遊び、直接触れあうことで、理解しあうことができます。わたしがかつて体験したように、一人ひとりがいろんな事を感じ、通じ合うことができます。それは共生社会の発展に役立つはずです。障がいのある人を特別視しない社会を作ること、すなわちユニバーサル社会の実現、これが私たちの使命であり、STANDの原点なのです。

 30日には神奈川県が主催する第1回「かながわパラスポーツフェスタ2015」が海老名運動公園総合体育館で開催され、ブラインドサッカー、車椅子バスケットボール、ボッチャを体験することができます。私たちSTANDも参加します。また、多くの人がスポーツを通して素敵な体験をし、一歩一歩ユニバーサル社会へと進んで行けることを願っています。

伊藤数子(いとう・かずこ)
新潟県出身。障害者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。1991年に車いす陸上を観戦したことが きっかけとなり、障害者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するため の「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障害者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障害者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障害者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。