オックスフォード大学日本事務所代表 アリソン・ビール「大学の国際化には、留学生を増やすだけでなく、根本的な制度改革が必要」

オックスブリッジの卒業生は、いま
オックスブリッジ卒業生100人委員会

外に出ることで、自由になり新たなリスクを取ることもできる

- 日本全体では、2004年にピークを迎えて以来、海外留学者数が減少傾向となっています。その原因や、感じていることはありますか?

少子化や経済的な要因はもちろんあると思っています。また、ブリティッシュカウンシル時代に留学支援を行っていた頃は、「自分」の経験や成長のためにフラワーアレンジメントや英語を学ぶといった非学術的な留学をする人は多かった気がします。今は留学後の就職を考えているからか、より現実的で、日本で資格を取ることを優先したり留学先で資格を取ったりなど、資格の価値を考えて選択している人が多い印象です。

ただ、就職を考えて留学しない人たちにも伝えたいことがあります。留学には目に見える資格以外にも有利になることはたくさんあるので、どんどん外に出て欲しいと思っています。目に見えないこと、例えば経験や学びによって広がった視野や考え方など、自己の変容もあります。留学はそうした変化や体験ができる良い機会だと思っています。私は、日本にきて価値観が変わりました。オックスフォードでヨーロッパの文学を勉強していた時は個人を大事にする価値観が大切だと思っていましたが、日本に来て、社会の連帯などを大切にした、素晴らしい社会が構成されている事を知りました。これまでの私の価値観が全てではないと感じました。自分が当たり前に思っている価値観の下にずっといると、つい怠けてしまう。外に出ることで、自由になり、リスクをとることもでき、今まで抑えていた自分を出すこともできると思います。

日本の大学の研究力は高いが、国際化には根本的な制度改革が必要

- これまでの仕事で多くの大学を見てきた中で、日本の高等教育についてどの様に感じていらっしゃいますか?

日本の研究力は素晴らしいと思っています。優秀な研究者がいるし、本学とも良いパートナーになると思います。ただ、日本の大学はそこまでグローバルとは言えない状態だと感じています。日本の大学とよくグローバル化について話す機会がありますが、留学する生徒を増やす、外国からの留学生を増やす、ということが主な議論の一つとなっています。しかし、それよりも大学自体が変わる必要があるのではないかと感じています。例えば、学生寮では留学生と日本の学生が分けられ交流が無かったりします。また、世界では優秀な教授を引き抜くことが一つのトレンドとなっていますが、日本では外国人教員の数も多くありません。優秀な海外の教授を呼ぶには、競争力のある給与や手当など、柔軟に大学の環境を変えなければいけません。もう一点、日本の大学は独自で改革を行うというより、文部科学省の財政支援や助言を意識して大学の改革を進めているように感じます。

大学の国際化に向けては、表層的な部分だけではなく、まずは自らの強みを分析・活用し、中身の制度などを根本的に変えていく必要があると思っています。世界から優秀な人材を集めるには、提携校の数や交換留学の機会がたくさんあるということよりも、まず大学全体の中身が充実し、伝わらなければいけないと思います。

例を挙げると、東京大学のPEAK (Programs in English at Komaba)という、学際的で魅力的なプログラムが始まっています。しかし最近、このPEAK合格者の7割が入学辞退したというニュースがありました。日本の大学は、国際プログラムで、あえて「国際性」を一つの看板にし、学内の一部のプログラムだけがグローバルな環境になっていて、不自然な状態に見えます。他方でオックスブリッジの場合は、コース自体の環境と教育が魅力だから全世界から人が集まり、結果としてどのプログラムにも当たり前のように留学生や外国人教員がいて、大学全体が「国際的」になっています。例えば、本学に1996年に新設されたサイード・ビジネススクール(Said Business School)や、2012年にプログラムが始まったブラバトニック公共政策大学院(Blavatnik School of Government)は、新しい大学院ではあるものの、中身を充実させ戦略的な情報発信をした結果、今では世界で最も国際的な大学院の一つとなっています。

2月に行われたハミルトン総長(中央左)との会食にて。写真右がアリソンさん。