「脳血管のダメージによって引き起こされる認知症、いわゆる『脳血管性認知症』というのがあります。特徴として、俗にいう『まだらボケ』が多く、良いときと悪いときで状態が大きく変わる。
大山さんの症状をうかがうと、この脳血管性認知症と、神経細胞が次第に死んでいくアルツハイマー型という認知症が重なったもののように思えます」(新田医師)
そして、この脳血管性の認知症には、もう一つ、恐ろしい特徴があると、新田医師は話す。
「一般的にアルツハイマー型の認知症ではジワジワと症状が進みます。一方、脳血管性の認知症は症状が階段状に進む、つまり、あるときガクッと悪化する場合があるのです。これは、それまでとは別の、新しいところで血管が詰まってしまうことで引き起こされます」
大山さんは現在、砂川さんが誰かはわかっており、会話を交わすこともできる。台本に書かれた文章を朗読することも可能で、「仕事がしたい」とも話しているという。
だがその様子は、明るく、よくしゃべり、社交的だったかつての大山さんとは、残念ながら大きく変わってしまった。
そうした寂しさが、介護自体の疲れとともに、砂川さんの肩にのしかかってきたのだろう。
今回、砂川さんに、大山さんの病状を公表することを勧めた夫妻の長年の友人、俳優の毒蝮三太夫氏は、こう語る。
「砂川とは学生時代から、もう50年来の友人でね。お互い、子供のいない夫婦同士4人で出かけたり、あいつの別荘に連れていってもらったり、麻雀したりしてきたわけ。
それが、大山さんが倒れてから、砂川は全部独りで介護をしてきて、大好きだったゴルフも1年前くらいからやってないし、友達と飲み食いにも行かない。
それに砂川がしゃべりたがらないから、みんなが『大山さんはお元気ですか』って訊くわけ。それもまたストレスだよね。
1ヵ月くらい前に、砂川と恵比寿で会って久しぶりに飲み食いしたら、もう、すごく痩せている。あいつ自身、大山さんが倒れてから、がんをやったり、帯状疱疹をやったりして、すっかりやつれちまった。
『お前な、老老介護ってのはほんとに、片っぽが元気じゃないとできないんだよ。自分で抱えこむんじゃない。こういうのを、人に黙っている時代じゃないよ』って言ったんですよ」
毒蝮氏は、自身も芸能人である砂川さんにとって、舞台に立つことが一番、自らの気持ちを高揚させ、元気になることにつながると考えた。そこで、ライブをやりたいと話す砂川さんに、「だったら、それを大山さんに捧げるライブにしろよ」と勧めた。