[MLB]
杉浦大介「A・ロッドはなぜ拍手を浴び始めたのか」

スポーツコミュニケーションズ

“セカンドチャンスの街”ゆえの物語

 少なくともここまでのところ、A・ロッドは常に笑顔を浮かべ、楽しそうにプレーしている。フィールド上でも結果を出し、チームの勝利にも貢献している。素直に応援し切れない気持ちが残っている人もいるに違いないが、それでも、ポジティブなバイブを出し始めた選手をいつまでもブーイングし続けるのは難しい。

打撃練習でも快音を響かせている。ただ、現在のように活躍できなくなった時、ファンはどう反応するのか。

 もちろん、現在のポジティブな流れがいつまで続くかは分からない。40歳を間近に控えた選手が打棒を取り戻したことで、“また薬物に手を染めているのではないか”と疑う人が出てきても無理はない。高齢ゆえに大きな故障もいつでも起こり得るし、活躍が止まれば歓声も消える。そして、地元以外の街では依然として大ブーイングを浴びていることも付け加えておきたい。

 その一方で、1年のブランクを経て瑞々しさを取り戻したロドリゲスが、“セカンドチャンスの街”での復活ストーリーを続けても、もう驚くべきではない。全盛期には誰よりもファンの愛を熱望した選手が、どん底に落ちた後、キャリアのこのタイミングに拍手を浴びるようになった事実は皮肉にも映る。

 紆余曲折を続けたA・ロッドの物語は、もう美談にはなり得ない。しかし、特にこの国では、才能のあるものには何度でもチャンスが与えられる。そして、本当に欲しいものは「夢にも思わなくなった」頃に得てして手に入るという真実を体現している。その意味で、彼の軌跡は興味深く思えてくるのである。 

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを 中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の 媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。
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