少なくともここまでのところ、A・ロッドは常に笑顔を浮かべ、楽しそうにプレーしている。フィールド上でも結果を出し、チームの勝利にも貢献している。素直に応援し切れない気持ちが残っている人もいるに違いないが、それでも、ポジティブなバイブを出し始めた選手をいつまでもブーイングし続けるのは難しい。
もちろん、現在のポジティブな流れがいつまで続くかは分からない。40歳を間近に控えた選手が打棒を取り戻したことで、“また薬物に手を染めているのではないか”と疑う人が出てきても無理はない。高齢ゆえに大きな故障もいつでも起こり得るし、活躍が止まれば歓声も消える。そして、地元以外の街では依然として大ブーイングを浴びていることも付け加えておきたい。
その一方で、1年のブランクを経て瑞々しさを取り戻したロドリゲスが、“セカンドチャンスの街”での復活ストーリーを続けても、もう驚くべきではない。全盛期には誰よりもファンの愛を熱望した選手が、どん底に落ちた後、キャリアのこのタイミングに拍手を浴びるようになった事実は皮肉にも映る。
紆余曲折を続けたA・ロッドの物語は、もう美談にはなり得ない。しかし、特にこの国では、才能のあるものには何度でもチャンスが与えられる。そして、本当に欲しいものは「夢にも思わなくなった」頃に得てして手に入るという真実を体現している。その意味で、彼の軌跡は興味深く思えてくるのである。