[MLB]
杉浦大介「A・ロッドはなぜ拍手を浴び始めたのか」

スポーツコミュニケーションズ

スター不在も影響

 そんなA・ロッドに、なぜニューヨーカーから再び拍手が送られ始めたのか。その理由は、端的に言って3つ。まず第1に、上記通り、予想を上回るレベルで活躍していること。前評判を覆してア・リーグ東地区の首位を走るヤンキースに、A・ロッドもさまざまな形で貢献してでた。ニューヨークは今も昔も“勝てば官軍”の街だけに、A・ロッドが打ち、勝っている限り、過去もある程度は忘れてもらえる。

試合前後のインタヴューにも丁寧に愛想良く応えている。

 また、今季ここまでのロドリゲスはクラブハウスでもおとなしく、論議を呼ぶような発言は基本的に避けていることも大きいに違いない。打順、守備位置などはたらい回しにされているが、それに関しても不用意なコメントは一切ない。

 メイズの本塁打記録更新時に手にできるはずだった600万ドルのボーナス支払いをヤンキース側は拒否すると伝えられている。だが、それでも「再びこうして野球ができることに感謝している。ボーナスのことは頭にないよ」と笑顔だった。

 ロドリゲスの発言はさまざまな形で取沙汰され、分析される。しかし今季はここまでのところ、周囲に突っ込む材料を与えていない。長くニューヨークで過ごしてきた筆者の目にも、今の彼はわざとらしさが薄れ、過去よりもスタジアムで快適に過ごしているように見えるのも事実ではある。

 そして何より、今のヤンキースにはロドリゲス以外にスター性のある選手、ファンがカネを払って観たいと感じるスーパースターが少ないのも大きいのだろう。

「(世界一に貢献した)2009年のプレーオフ、それ以外の何度かの重要な活躍の際を除けば、A・ロッドは常にブーイングの対象だった。しかし、デレク・ジーターが引退した今、ファンはアンチ・ジーターと呼べる存在の選手に声援を送ることに罪悪感を感じなくなったようにすら思える」
 ニューヨーク・デイリーニューズ紙のジョン・ハーパー記者のそんな記述は、ヤンキースファンの微妙な心理を表しているのかもしれない。

 ここ数年でジーター、マリアーノ・リベラ、アンディ・ペティートといった英雄たちが続々と引退。ファンの心にもぽっかりと穴が空いたところに、存在感では誰にも負けないロドリゲスが戻ってきた。