日本クラフトビール代表取締役・山田司朗「和食に合う日本の『ビール文化』を創って、世界中に広げていきたい」

オックスブリッジの卒業生は、いま
オックスブリッジ卒業生100人委員会

また、日本と英国の起業家のマインドの違いも新しい気付きでした。ケンブリッジには、歴史的に大学発の技術ベンチャーとベンチャーを支援する投資家のコミュニティがあり、学生のビジネスコンペも盛んに行われています。その講師陣の1人の言葉で、起業を目指すときの「3つ基本思想」、①グローバル、②サステナブル、③Underserved unmet needs(未解決の課題・ニーズの解決)にインパクトを受けました。当時私が関わっていた多くの日本のスタートアップは国内での短期的な指標を追求しがちで、グローバルやサステナブルの考え方は自分にとって新しい視点でした。たとえスタートアップでも、論理的に俯瞰的に事業を評価しその価値を見直すという姿勢は、今でも自分の考え方に大きな影響を持つ言葉になっています。

日本クラフトビールが生まれるまで

―日本発のビールを世界に展開する、日本クラフトビールを立ち上げられるまでの経緯についてもお聞かせください。

先ほどお伝えした起業の3つの基本思想のうち、3つめのUnderserved Unmet needs(未解決の課題・ニーズの解決)という観点において、日本ではビールの本当の良さが伝えられておらず非常にもったいない、ビールの本当の価値を伝えていきたい、という気持ちが起業のモチベーションになっています。

留学前のスペインへの赴任期間、ケンブリッジへの留学期間には欧州の各国に訪れる機会に恵まれ、それぞれの土地柄の文化・歴史に根ざしたビールが作られていることに強い印象を受けました。ビールには、ワインや日本酒と同様に、歴史的には様々なスタイルがあります。欧州ではベルギー・ドイツ・英国の三大ビール国に加え、それ以外の国・地域でもその土地独自のビールが造られています。例えば英国のパブでは複数種類のビールが準備されており、ビールの注文は「ビールをください」ではなく、銘柄指定で「ギネスをください」と言わないと通じません。

フレンチでは1皿ごとに食事に合うワインが吟味されて出されるのに、日本では大手飲料メーカーの画一されたスタイルのビールが一般的です。欧州の各地域に根付いている数百年以上前から続く「ビール文化」を見直し、世界に広がる「和食の世界観」に合った、おしゃれなカウンターにも映えるハイエンドの美味しいビールの文化を創って広げていきたいと思っています。

こういった気付きは、日本から海外に出て欧州でのビール文化を知ったからこそ、と言えると思います。

Hong Kong International Beer Awards 2013では、日本クラフトビールのブランド「馨和 KAGUA」が大賞を受賞。世界各国へ日本発の「和の食卓に映えるビール」を届ける。

―日本発のクラフトビールを世界に届けていきたいというミッションの裏側にはケンブリッジでの経験が関わっているということなのですね。

留学中の起業家の方たちとの出会いが、今の会社を立ち上げた大きな原動力になっています。また、欧州各国を旅する中で英国・欧州に息づくビール文化に感銘を受けたことも、日本では得られない大きな気付きになっています。先ほどお話した、起業における「3つの基本思想」、これは今の会社のミッション・ビジョンにも活かされています。

ケンブリッジに行かなければ、今の会社を創業することもなかったし、たとえ起業してもグローバル市場を最初から狙うこともなかっただろうと思います。多くの日本ベンチャーは、まず国内で事業基盤をつくってから次に海外を目指そうとしますが、欧州の多くの企業は最初から海外を見ています。日本クラフトビールでは、最初からグローバル市場を見据えた製品の企画・設計、マーケティング戦略を立て、それがラベルデザインやパンフレット等に活かされています。

KAGUA(左)は高級和食店のカウンターを、FAR YEAST(右)は東京の都会的なバー、カフェなどに映え、かつ世界で通用するようなラベルデザイン。