【沿線革命042】 経営危機の湘南モノレールをドル箱路線に

阿部等(交通コンサルタント)

7.5分おきを6分おきにするだけで利用が増える?

JR西日本の富山港線を再生し、2006(平成18)年4月に開業した富山ライトレールは、日本で唯一のLRT(Light Rail Transit、次世代型路面電車)と言われ、地方鉄道再生の成功モデルとも評価されている。

成功の最大要因は、超低床化でもお洒落な車両の導入でもない。なんとも地味で夢のない話に聞こえるが、高頻度化である。現地を最もよく知る森雅志富山市長からも「ユーザー評価の90%以上は本数増」と伺った。

車両が超低床でお洒落でも、1時間おきでは使い物にならない。朝ラッシュは10分おき(以前は30分おき)、昼でも15分おき(以前は1時間おき)に運行するようにしたから、利用しやすくなったのだ。

JR西日本時代と比べ、運行本数を3.4倍としたら利用者数は2.7倍となった。

湘南モノレールを7.5分おきから6分おきとし、所要時間も20%短縮して、どれ程の利用増を見込めるだろうか。

私は、富山ライトレールを含め、思い切った増発や時間短縮を実行した路線において、どれ程の利用増となったかを調べたことがある。そして、おおむね√(ルート)の法則が当てはまると考えている。

本数を2倍にすると利用は1.4倍、所要時間を半分にすると利用は1.4倍といった関係である。湘南モノレールの提案では、本数を4分の5倍、所要時間を5分の4倍とするので、それらを組み合わせた上で√(ルート)の法則を当てはめると、利用は4分の5倍となる。

湘南モノレールの朝ラッシュは結構な混雑となり、公開されている最新データの2010(平成22)年で167%(『平成24年版 都市交通年報』より)である。輸送力を4分の5倍とすれば混雑はだいぶ緩和され、混雑を嫌っていた潜在需要を掘り起こせる。

社会全体が人口減少局面に転ずる趨勢とは言え、4分の5倍より若干少ない20%増くらいは十分に見込めると予測する。

老朽化の補修費が仮に10億円/kmだった場合に営業収益を20%増額できれば、17.5年で回収できると書いた。金利負担を配慮しても鉄道プロジェクトとしては優良と言える。

行き違い駅間3分以内に短縮できるか?

以上だけでは画に描いた餅だ。行き違い駅間の所要時間全てを3分45秒以内から3分以内に短縮できなければいけない。

それが簡単にできるなら、現行よほどゆっくり走行していることになる。湘南モノレールに乗ったことがある人は、結構スピード感があると感じたはずだ。さらにスピードアップできるとは想像できないだろう。

ところが、それができるのだ。大船→湘南江の島の走行風景(https://www.youtube.com/watch?v=oC4FOtgmuTU)14分中の行き違い駅到着の1分~30秒前だけをご覧願いたい。

信号機に黄色が2つ並んで表示される。「警戒」信号と称され、25km/hの速度制限を受ける。対向列車と行き違う際は、常に同様の信号が現示(「げんじ」と読む)される。

停止位置を行き過ぎて対向列車と正面あるいは側面衝突する重大事故を回避するために、駅への進入速度を抑えているのだ。

湘南モノレールの車両は、4km/h/sという通常の鉄道より高い減速度(1秒に4km/hずつ減速)を持っているのに、行き違い駅のだいぶ前から25km/h制限を受け、それを生かせていない。

車両のブレーキと連動する信号システムを高度化し、この速度制限を廃止することを提案する。細かな計算の説明は省略するが、それにより行き違い駅手前の駅間の走行時間を30秒程度短縮できる。

その他に駅の停車時間を短縮できる要素もあり、行き違い駅間の所要時間全てを3分45秒以内から3分以内に短縮することは十分に可能である。